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第107話

 部屋はさほど広くはなく、白を基調とした長机が四脚あり、黒板の代わりに小さなホワイトボードと、大きなスクリーンが設置されている。用途は分からないが、何処かの部活動で使用されている部屋なのかもしれない。  そして気になっていた三國の足。どちらの足が負傷しているのか分からない程に軽やかな足取りで三國は窓際に行き、カーテンを何故か閉めた。  部屋が一気にうっすらとした暗さに覆われる。その薄暗さも手伝って、えも言われぬ緊張感と恐怖心が増していく。 「足は大丈夫なんですか?」  聞こえているはずなのに、三國は答えない。この妙な静けさが居心地の悪さに拍車をかける。 「話……とは何でしょうか? わざわざカーテンなんて閉めて……」  ここは二階だ。この学園の敷地は広く、周囲の建物からも距離があり、外から中の様子を見ることは困難だ。それなのに何故と佐奈の困惑は増していくばかり。 「この方がいい演出になるだろう?」  三國はようやく口を開くが、その内容は余計に佐奈の不安を煽る。 「演出……?」  佐奈の問いに三國は口の端を僅かに上げた。その表情はどこか妖艶さが混じりながらも、何か毒気を孕んでおり、佐奈は息を呑む。  今すぐここから離れた方がいいと、佐奈の中で警鐘が大きく鳴り響く。 「俺はこれまで男に困ったことはなかった。ノンケの男もその日限りだと喜んで俺を抱く。俺もそれが楽だった。恋愛なんて面倒だからな。そんな俺が一人の生徒に夢中になってしまうなんて、自分が信じられなかったよ」  立ち尽くす佐奈を余所に、三國は長机の椅子を引くと、そこへ腰を降ろし、まるで独り言のようにポツポツと語りだした。

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