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第112話
「佐奈の友達だとか言う、イケメンの男だよ……」
「イケメン」
佐奈はここで堪らず笑う。慎二郎と言い、やはり兄弟は同じ事を言うんだなと。
倉橋はあの後直ぐに優作を探して駆け回ってくれたようだ。そしてこれまでの三國のことをすばやく説明し、ここの場所を教えたそうだ。
何から何まで倉橋には頭が下がる思いだ。
「倉橋には色々協力してもらったり、支えてもらったりもして、本当に感謝だらけの最高の友達なんだ。だからこれからは、変に威圧的な態度取らないでよ?」
以前倉橋も優作に少しの恐怖心を抱いていた。家族以外というか、佐奈以外の前ではにこりともしない優作が人に与える威圧感は相当なものだろう。顔が美しすぎることも大きな原因だ。
それを当の本人が何も感じてない事が、より悪化の原因にもなっている。
「佐奈に触らないんだったらな」
「触らない……って、だから優作心配し過ぎだよ」
佐奈の思いが全く伝わっていないことに呆れつつも、優作が冗談ではなく本気で言ってる事が分かるため、強くは言えなくなった。
「言っただろ? 誰であろうと佐奈に触れる人間は許せねぇと。頭では分かってんだよ。佐奈にだって付き合いもあるし、友達とふざけあうこともあるって。でも感情がそこに付いていけねぇんだよ」
優作は扉に近付くと、さも自然な動作で鍵を掛けてしまう。戸惑う佐奈などお構い無く、優作は佐奈の傍に寄ると、佐奈の身体を長机に腰を預けるような体勢をとらせた。
「優作……?」
「自分でも重いって思う。でも出来るなら佐奈は誰にも見せたくねぇ……。こんな俺は嫌か? 怖いよな……」
佐奈の前でだけ見せる素顔。まるで飼い主に必死にすがる大型犬のよう。だがそんな優作が愛おしい。どんな優作であれ、優作に代わりはない。
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