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第113話

 佐奈は優作の両手を取って強く握りしめると、首を振った。柔らかな佐奈の黒髪がそよぐように揺れる。 「嫌じゃないし、怖くない。ねぇ優作」 「ん?」  薄暗い部屋でも、美しい(あお)。その目を見つめていると本当に吸い込まれそうになる。 「オレは優作となら地獄の果てでも一緒に堕ちていきたい。優作を一人になんて絶対にしないし、オレだって一人になりたくない。もしかしたらオレの方が重いかもよ?」  自嘲気味に笑う佐奈の視界が、優作の顔でいっぱいになる。 「その言葉忘れるなよ?」 「ん……っ」  返事をする前に、優作の唇によって口を塞がれた。  誰かが来るのではと一瞬焦ったが、先程優作が鍵を掛けた事を思い出し、佐奈はおずおずと優作の背中へと手を回した。  相変わらず慣れた愛撫に嫉妬を覚えながらも、巧みに蠢く優作の熱い舌に応える事に必死となる。喉奥まで犯され、舌を強く吸引されると、佐奈の舌は甘く痺れた。 「ん……ぁ」  咥内の愛撫がこんなにも気持ちいいものだと昨日知ったばかり。応えようにも、気持ち良すぎて頭の中が快楽の海に深く漂っている状態だ。佐奈はただその流れに逆らわないように、身を任せるしか出来なかった。  長い長いキスが解かれ、佐奈と優作の間に銀の糸が引く。濡れた唇を舐める姿が、なんてエロいのだと佐奈は釘付けとなっていた。  その優作が佐奈の前で徐に膝を突いた。  ちょうど優作の顔の位置が佐奈の下腹部だ。先程のキスのせいで兆しを見せている自身。異様な形で盛り上がる下腹部を見られたくなくて、佐奈は慌てて手でそこを隠す。 「ゆ、優作? どうしたんだよ……立って」  もじもじと動く様も情けなくて、佐奈の顔は羞恥で赤くなっていた。

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