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第121話

◇  翌日。朝のショートホームルームが終わり倉橋らと談笑している時、佐奈のスマホに、ある一報がメッセージアプリに届いた。  優作からだと内心嬉しさでメッセージを開くが、その内容に佐奈の頭の中は真っ白となった。 「深山?」  佐奈の様子にいち早く気付いた倉橋が、顔を覗き込んでくる。 「どうかしたのか?」 「……三國先生が」 「三國が? またアイツ何かしたのか!?」  倉橋は三國の名を聞くと、途端に険しい顔となる。昨日のことは、唯一事情を知る倉橋には断片的にだが話した。だから余計に三國の名に過剰に反応し、嫌悪を剥き出しにしてしまうのだろう。 「退職するって……」 「退職!?」  傍で聞いていた元も驚いたように、話へと入ってきた。  佐奈は動揺しながらも首肯する。 「今日から二十日間の有給休暇を消化して、そのまま辞めるらしい。優作からラ◯ンがいま来て……」 「マジかよ……。思い切ったことするな、あの先生も」  倉橋も驚きを隠せないながらも、どこかホッとしたように息をついた。  周囲にいたクラスの生徒にも聞こえたのか、ざわざわと動揺の波が広がっていく。  三國はあの美貌もあり、一年の女子からも人気の高い教諭でもあった。そのため女子生徒らは一気に沈んでしまった。 「あれがアイツなりの〝始末〟なんだろう」  優作と二人、ブレイクルームでの昼食。顔を合わせるや、佐奈は開口一番に三國のことを訊ねた。 「始末か……」  佐奈はその始末について考えた。  この学園は生徒だけでなく、教諭も憧れる伝統のある名門校である。故に教諭にとって、ここ新城学園で教鞭を執るのはステータスなのだ。  その名門校を、あっさりと捨ててしまえる三國の覚悟というものを見せつけられた気がした。  それは逃げではなく、全ては優作のためという覚悟。それほどに三國は、本気で優作のことを想っていたのだ。佐奈はそれを思い知らされた。  

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