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第123話
「そ、そもそも家はダメだって、慎二郎から念を押されているし……」
「佐奈は俺とセックスしたくないのか?」
「セッ……」
余りにもストレート過ぎて、佐奈は一人顔を紅潮させながら慌てたが、優作の真剣な蒼とぶつかり、佐奈は反射的に背筋を伸ばした。
「……正直、ちょっと怖いって思ってる。でも優作に抱かれたらどんなに幸せなんだろうと思う。キスだっていっぱいして欲しいし、したい。優作に触れてもらいたい、抱きしめ──むふっ」
熱くなった気持ちを吐露している途中で、佐奈はいきなり口元を手で塞がれてしまった。
何事かと驚く佐奈を放っておいて、優作は突然無言で立ち上がった。
「悪い佐奈、ちょっと待ってて」
佐奈の返事を聞く前に、優作は素早くブレイクルームから出ていった。
「……優作? え?」
一人残された佐奈は暫く呆然とする羽目となった。
「何処行ったんだろ」
もう食べられそうにない弁当に蓋をすると、鞄に突っ込みため息をこぼす。
そして五分程経った頃だろうか、扉が勢いよくスライドし、優作が少し息を乱して入ってきた。その手には何故か優作の鞄がある。
「佐奈、悪いけど午後からはフケるってツレに連絡しておけ」
「へ? ちょ……ちょっとちょっと! 優作!」
優作は佐奈の鞄を引っ掴んでから、手首を掴み、そのままぐいぐいと引っ張る。だが佐奈は抵抗するように優作の手を引っ張り返した。
「ま、待ってって!」
「待たない。このまま家に帰る」
「家!? な、なんで……」
ずんずんと引っ張られるため、すれ違う生徒らは何事かと驚いている。佐奈は佐奈で優作の言葉に驚かずにはいられない。
「明日じゃ待てないんだ……」
前を闊歩する優作の背中は、今にも弾けてしまいそうなものを必死に堪えている様に見えた。
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