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第139話

「佐奈……佐奈」  まるで甘える大型犬のように、優作は佐奈の首筋に高い鼻先をすり寄せたり、舐めたりしていて、普段クールと名高い男の姿からは遠くかけ離れている。  だが佐奈にとっては、どんな一面を見せようとも優作は優作だ。世界でたった一人の、大切な恋人なのだ。 「佐奈……大丈夫か?」 「……うん……ちょっと動くのはムリかも」  それだけではなく、後孔が相当に痛む。だがそれだけは口には出さないようにした。  ようやく繋がる事が出来て、幸せの絶頂にいることは間違いなく、それに水を差すような真似をして優作にも心配は掛けたくなかったからだ。  だが全身の倦怠感はどう取り繕うとも、直ぐに嘘はバレてしまう。今すぐ起き上がれと言われても、少し自信がないからだ。 「シンももうすぐ帰ってくる時間だな……」  優作は時計を見ながらかなり不満そうに呟き、佐奈へと視線を戻すと、頬に残っていた涙を指で拭った。 「優作……ここにいたら、慎二郎に絶対バレる。だから……部屋に連れてってくれない?」 「……」  暫く黙る優作に佐奈が不安になったとき、突然優作が金の髪を掻き乱しながら唸った。 「あぁー……朝まで佐奈とベッドにいてぇのに、マジで不便」  後二年も家から出られないのかと優作はぶつぶつと文句を垂れながら、ガウンを羽織り、佐奈を横抱きにしてベッドから降りた。 「優作ごめん。ありがとう」 「佐奈が謝ることじゃないよ。初めてなのに無茶してごめんな……」  優作は佐奈の部屋に向かいながら、ずっと佐奈に啄むキスをし、一時も離れたくないという想いを伝えてくる。それは佐奈ももちろん同じであるため、キスで応える。 「佐奈……愛してる」  佐奈をそっとベッドに寝かせて、優作は美しい碧を愛おしそうに細め、佐奈を見つめる。

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