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第140話

 佐奈の目には涙の膜が徐々に大きく張っていき、ついには大粒の雫となって頬を伝っていった。 「優作……オレも……オレも優作を愛してる」 「ありがとう」  本当に嬉しそうに、幸せそうに優作は笑顔の花を咲かせる。  セックスをして、愛の言葉をもらって、やっと実感が持てるようになった。優作と本当に身も心もしっかりと繋がったんだと。優作は自分のものなんだと。  内から込み上げるもので、佐奈は笑顔を浮かべながら涙を流していた。 「親……一哉には、また俺からタイミング見て話すよ」 「うん……そうだよね。でもアビーには?」 「アビーはいいよ。あの人は大概何でも受け入れられる人だし、一哉が話すだろうしな」 「確かにそうかも……」 「だろ?」  佐奈は大きく頷いて二人で笑い合う。  普段から両親が傍にいるわけではないから、このまま隠し続けることも、もしかしたら出来るかもしれない。  だが、優作はきっと黙ってることはしないだろうと思っていた為、佐奈も驚きはしなかった。  聞かされた一哉はきっと直ぐには受け入れられないかもしれない。戸惑うこともするだろう。だが一哉ならきっと理解はしてくれる。楽観的だと言われてしまえばそれまでだが、一哉は何よりも子供が全ての人だ。  いつかは二人を認めて温かく見守ってくれる。そんな未来が佐奈には見えた気がした。 「佐奈、夕飯は俺が作るから、このまま寝てろ。いいな?」 「でも……」 「大丈夫。簡単なものなら俺でも作れる。麺が確かあったな。焼きそばにしようか」  優作はクローゼットを開けて、シャツやら、下着を取り出し、佐奈に着せようとする。 「自分で出来るよ」 「いいから、俺がやりたいんだ」 「……じゃあお願い」  佐奈が渋々折れると、優作は嬉しそうにタオルで佐奈の身体を綺麗に拭いて、スウェットを着せる。  優作は昔から佐奈に対しては世話を焼きたがる。それを嬉しそうにされると、結局は佐奈もそれが嬉しいと感じるのだ。  まるでバカップルのようだ。  

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