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第2話

「直ぐに出来るから、早く顔洗ってきて」 「めんどくさーい」  佐奈の肩で慎二郎は額をグリグリと押し付け、断固拒否の姿勢を取る。佐奈はため息一つこぼすと、火を止め、そのままズルズルと佐奈より大きな慎二郎を引きずるように洗面室へと向かった。   「はい、先ず歯を磨いて」 「はぁい……」  ホテルのように広々とした大理石の洗面台。壁に設置されている歯ブラシのホルダーから、佐奈は慎二郎の歯ブラシを取ると手渡した。ここまでされてしまうと慎二郎も抵抗など出来ない。渋々とそれを受け取ると、歯みがき粉をブラシに付けた。 「おいシン。お前は毎度毎度、佐奈の手を煩わせるな」  不意に洗面室に響く低い美声。佐奈は声の主へと顔を向ける。そこには洗面室の入り口に腕を組んで寄りかかる男が一人。寝起き全開といった(てい)で、華美なシャンパンゴールドの髪はあちこちと跳ねている。華美なのは髪色だけではない。瞳は紺碧で澄んだ青空のように美しい。そして顔から身体、全てがまるで計算されたかのように美しい造形。見る者全てが必ず見惚れてしまうもの。ゴージャスという言葉は、この男の為にあると言っても過言ではないほどだ。 「お、おはよう……優作(ゆうさく)」 「おはよ、佐奈」 「っていうか、服着てよ!」 「ん? あぁ……悪い」  佐奈に指摘されたゴージャスな男、優作はとりあえずと素直にカゴに入っているガウンを広げると、それを羽織った。優作は全裸であったわけではない。ただ上半身だけが裸だっただけだ。それに対して過敏に反応し過ぎた自分に、佐奈は舌打ちしたい気分だった。 「ユウさぁ、筋肉見せびらかして、悦に入ってんなよな。ウザいし」  口を濯いだ慎二郎は優作へと嫌みを浴びせる。

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