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第17話
それすらも奪わないで欲しい。あの女教師との関係も気になるが、名前を呼べる唯一は佐奈だけのものなのだから。
「どうした? 不味いのか?」
「え? ううん──っ」
我に返った佐奈の手から、優作はバナナミルクのパックを奪いストローを口に咥える。驚き過ぎた佐奈は一瞬唖然としてしまうが、直ぐに心臓が派手に跳ね上がる。
「ちょ……なに飲んでるんだよ!」
「なにって味見。って、あまっ!」
顔をしかめて優作はパックを佐奈へと返してくる。佐奈はそんな優作が可笑しくて笑うも、内心ではドキドキと鼓動が速すぎて、優作に聞こえてしまうのではと心配にもなる。
ストローの間接キスくらいで、まるで小学生かと自身でも突っ込みたくなる反応。だが、誰が何と言おうと嬉しいものは嬉しいのだから仕方ない。
「甘いの苦手なくせに」
「いや、これは甘いなんてもんで済まされないぞ。甘すぎだろ。砂糖舐めてるみてぇだし……。こんな身体に悪いものやめておけよ」
優作は口直しになのか、自販機でミネラルウォーターを買い、直ぐに口をつけ半分ほど飲んでしまっている。
「分かってるよ。飲むときは自分で作ってるの知ってるでしょ?」
「あぁ、そうだったな。あれならまだこっちより飲めるかもな」
「じゃあ今度作ってあげようか?」
「……あー……またな」
途端に口ごもる優作に佐奈は噴き出した。都合が悪くなると、優作はいつも歯切れが悪くなる。そこが可愛いと思っていることは、もちろん本人には言えないことだ。
「そんなに笑うなよ」
「だって……」
「もういいだろ」
頭を撫でられ、佐奈は笑いすぎで涙で潤む目で優作を見上げた。目が合った途端、優作はスッと視線を逸らして、頭からも手を離していく。何かまずいことでもしてしまったのかと、佐奈は途端に凹んでしまう。
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