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第18話

「……佐奈、今日は何限までなんだ?」 「今日は……次の時間で終わり」  佐奈がそう告げたと同時に、気まずい空気を断つようにチャイムが鳴った。 「そうか。俺は今日はバイトだし、そのまま行くから帰り気を付けろよ」 「うん、分かった。バイト頑張って」 「あぁ」  お互いに手を軽く振って別れ、佐奈は教室まで走った。  バイトなどしなくても、深山家は裕福すぎる家だ。だが優作は社会勉強を兼ねて、将来のためにコツコツと、ジムでの受付のバイトで金を貯めている。親から預かっている金は、食費など必要な物にしか使わないように優作がしっかりと管理までしている。  決して驕ることなく、父親の代わりとして兄弟を守る。佐奈にとって優作は、どんな時でも最も頼れる存在で、そばに居てくれるだけで佐奈はとても安心できるのだ。  きっと将来は今以上に素晴らしい男性となり、家族を支えていくのだろう。それを傍で支え、見続けることが出来ないことが悔やまれる佐奈がいた。  一哉とアビーがアメリカへと戻って、三人だけの生活が再び帰って来た。佐奈は二人よりも早く起きて朝食を作り、そして三人で登校し、帰りはスーパーに寄って夕食作り。今日も日課となっているスーパーで何を買おうかと佐奈が頭を悩ませていると、不意に誰かに肩を叩かれた。 「なぁ深山、今日みんなでカラオケ行こうってなったんだけど、行かねぇ?」  相手は倉橋だった。 「カラオケ……」  実は佐奈は生まれてこの方、カラオケに一度も行ったことがない。誘われてはいたが、夕食を作らなければならないなどで、ずっと断っていたのだ。  だが佐奈も高校生だ。友人との付き合いも時には必要だと感じた。優作といる時間を少しずつでも減らしていった方がいいかもしれないと思ったからだ。〝いつか〟が訪れても大丈夫なように。

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