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第19話

「佐奈は家のことで忙しいから、諦めろって」  元が倉橋を諭すように言う。そこに佐奈はすかさず首を振った。 「佐奈?」 「オレも行く」 「え? 行くって大丈夫なのかよ? 珍しいじゃん」  今までずっと佐奈を誘い、断り続けられた本人である元は心底に驚いてる。そんな元に佐奈は今までのことを申し訳なく思う。 「大丈夫! 誘ってくれてありがと」 「佐奈の歌声、初披露とかマジで貴重!」  佐奈も行くとなり、男子ばかりの六人のメンバーはテンションが上がったようだ。  そして佐奈は少し帰りが遅くなることを優作に連絡を入れた。  カラオケは佐奈が思っていた以上に、人前で歌うことがとても恥ずかしいものだと知った。皆は上手いと言ったが、佐奈にとっては初心者には厳しいハードルで、飛び越えることは直ぐには出来そうにもなかった。 「そう言えば昨日だったかな。トイレ行くときに深山の兄さん見掛けたんだけどさ、一緒にいた先生が、深山に何となく似てたんだよな」 「あーそれ知ってる! うちのクラスの女子が話してたな。三國(みつくに)とかいう二十五歳の男の先生が佐奈に似てるって」  聞き役に回った佐奈に付き合うように、倉橋が話し掛けてきたが、それに元が反応し、佐奈を挟んで会話を始める。  倉橋は男である先生に対し、綺麗だ美人だと褒め、メガネが知的でいいと称賛している。  そんなにべた褒めするような先生が、佐奈に似ているという倉橋の目が佐奈は心配になった。  心配と言えば、優作から返信がないことが気になった。十分置きにスマホをチェックするも、代わり映えしない画面に、佐奈の心配はピークに達する。居ても立ってもいられず、佐奈は一人抜けることにした。倉橋と元が送ると言っていたが、女ではないからそれは丁重に断り、場を後にした。
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