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第20話

 佐奈は電車内でスマホの画面を見つめ、悶々とする。無料通話アプリのチャット画面で、既読と付いているのに、返信が無いことが気になって仕方なかったのだ。電話するよりも帰った方が早い。しても出てもらえない可能性もあるからだ。 「ただいま」 「佐奈ぁ~おかえり~腹減ったよぉ」  佐奈が靴を脱いでいると、出迎えた慎二郎に思いっきり抱きつかれる。その中、佐奈は疑問に思い眉を寄せる。 「お腹減ったって……ご飯食べてないのか? 優作に連絡したんだけど」 「ユウのやつ、佐奈は遅くなるとだけ言って出掛けたし」 「……そうか。ごめん、今すぐ作るよ」  佐奈は急いで夕食の準備をし、簡単に出来るオムライスとオニオンスープを作った。その間もずっと優作のことが気にかかっていた。  まさか、あの教師に会いに行ってるのだろうかと、そんな事を考えては佐奈は溜め息をこぼす。 「どうしたんだろ……」 「なにが?」  耳聡い慎二郎は、オムライスを咀嚼しながら訊いてくるが、優作のことばかり考えてるなど言える訳がない。佐奈はオニオンスープを口につけてから、慎二郎に笑みを向けた。 「ううん、何でもないよ。美味しい?」 「うん、もちろん絶品! それに佐奈と二人っきりとかサイコーだし」  アンバーの瞳はキラキラとしている。その背後には、フサフサの尻尾が嬉しそうに振られているのが見えそうだ。  しかし中学三年の男子が兄と二人きりで嬉しいとは、やはり佐奈は心配になる。 「それは良かった。そう言えば、慎二郎は彼女いないのか? 家に連れてきたこともないし。遠慮せずに連れておいでよ」  良かれと思い佐奈はそう言うが、何故か慎二郎は途端に不貞腐れる。彼女が欲しいと思う年頃の子に、可哀想なことを訊いてしまったかと佐奈は焦る。

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