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第33話
そう問われても、答えを用意していなかった佐奈は必死に頭をフル回転させるしかない。
「えーと……ゲーセン?」
「なんで疑問形?」
都内の道中はどこも人で溢れ返っている。視界も決していいものではない。だが優作が笑うと周囲の時間が止まったかのように、佐奈の目には優作しか映らなくなる。
「ゲーセンなんて何年ぶりだ。佐奈は初めてだよな?」
「うん、だから一度行ってみたくて」
「じゃ、行くか」
「うん!」
ゲームセンター内は様々な音が溢れ、会話も大きな声で話さないと聞こえない。自然と優作との距離が近付き、佐奈は秘かに来て良かったと喜ぶ。
豊富な音ゲーに、クレーンゲーム、レースゲームとあらゆるゲームに、佐奈は夢中になった。
「優作、ちょっとトイレ行ってくる」
「おう、場所分かるか?」
アクションゲームをしている優作が手を止めて腰を上げようとするのを、佐奈はそれを制して大きく頷き、トイレへと一人向かう。
トイレに入るとスッと音が遮断され、佐奈は少しホッと息をついた。慣れない場所での耳の酷使といったところだ。
用を済ませ、佐奈がトイレの出口へと向かった時、扉が開き、男が二人入ってきた。
二十代前半くらいで二人ともに目付きが悪い。佐奈は目を合わせないように、二人に場所を譲って横を通りすぎようとした。
「いってぇ!」
「あ……」
邪魔にならないよう場所を譲ったのにも関わらず、男はわざとらしく肩をぶつけてきた。
「『あ……』じゃねぇよ。どこ見てんだよ」
「すみません……」
謝る佐奈を男二人は、ニヤニヤと嫌な目付きを寄越してくる。完全に因縁を付けられている。
このまま優作のもとへ突っ走ろうかと佐奈は思ったが、きっと直ぐに捕まり、余計に相手を怒らせるだろう。
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