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第37話
「ごめん、佐奈を責めてるわけじゃないからな!」
「うん」
佐奈は頷きながらも俯いた。結局は自分のことしか考えてなかったと言うことがよく分かった。優作と一緒にいられる幸福な時を優先したのだ。
「ただアイツに腹が立ってしょうがねぇんだよ」
吐き捨てるように言う慎二郎に、佐奈は悲しくなった。
「昔はあんなに仲が良かったのに」
「昔って言っても、本当にガキの頃じゃん」
仲が良いという言葉さえも嫌なのか、慎二郎は渋面をつくる。
「なんでそんなに悪くなったんだよ……」
「それは佐奈は知らない方がいいよ」
「なんでだよ」
佐奈の問いに慎二郎は苦笑いを浮かべた。
「佐奈が困るから」
「オレが困る? どういうこと?」
「佐奈、夕飯はナポリタンがいいなぁ!」
慎二郎は佐奈の背中を押して、キッチンへと連れていく。佐奈はわざとらしく大きなため息を吐いた。
途中で話を切られる方が困ると文句を言いたいところ。二人の仲が悪くなった理由を知って、なぜ佐奈が困ることになるのか。自分がもしかしたら原因の一つなのではと佐奈は一晩頭を抱えた──。
ゴールデンウィークも終わり、世間にはいつもの日常が戻った。
優作と慎二郎もいつもの二人。佐奈だけが一人スッキリとしないが、いつまでも悩んでる時間は佐奈にはなかった。
「ちょっと慎二郎、いつまでもテレビ見てないで、早く用意しないと遅刻するぞ!」
「分かってるよ」
慎二郎は休み明けから今日まで、だらだらと締まりがない。いちいち言わないと動かないのだ。所謂、日常の忙しさで考えてる間がなかったのだ。
「佐奈、ほっとけ」
髪をセットし終わった優作は、ブレザーに腕を通しながら呆れ顔を見せる。
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