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第42話

「何って、たまには一緒に帰ろうと思って迎えに来たんだよ」 「たまにはって……とにかくここじゃ邪魔になるから、外に出て」  佐奈が慎二郎の広い背中を押すと、慎二郎を囲っていた女子生徒らは慎二郎に手を振って各々帰って行った。 「あいっかわらずに佐奈にベッタリだな、慎」 「うるさいですよ、安西」  佐奈の腕を組んですました顔をしている慎二郎がふと、倉橋に目を遣った。  それに気付いた佐奈がお互いの紹介をする。 「へぇ……弟もいたのか。なるほどね。こっちはあのお兄さんと兄弟なのは頷けるな」  倉橋が感慨深げに言う横で、慎二郎は不機嫌な顔を隠さない。倉橋はそんな慎二郎を見て僅かに肩を竦めた。 「深山……なんか色々と大変だな……」  倉橋はしみじみと言いながら佐奈の肩を軽く叩いて、元と二人、先を歩いて行った。 「なんだアイツ。気安く佐奈に触るなっつうの」  倉橋が触れた佐奈の右肩を、慎二郎は汚れを落とすかのように叩く。  佐奈は慎二郎の手首を掴んでそれをやめさせる。 「友達なんだから普通に触るだろ。それより本当にどうしたんだ? 何かあったのか?」  慎二郎のアンバーの瞳を佐奈が心配げに覗き込むと、慎二郎は「う~ん」と唸り声を上げた。 「なんかよく分かんねぇんだけど、佐奈からSOSが届いた気がしてさ。佐奈こそ何かあったりとかしたか?」 「ないよ。大丈夫!」  佐奈は笑顔を貼り付け、慎二郎の背中をポンと叩く。だがその内心では、激しく動揺していた。慎二郎は時々だが、野生動物なみの勘が働く時がある。佐奈が中学の時、授業中に体調が悪くなったときには、慎二郎が突然駆け付けてきたことがあったのだ。  

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