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第43話
小学生の時、体育で鉄棒が出来ず深く落ち込んでいたときも、放課後教室まで迎えに来たこともあった。偶然かもしれないが、時々慎二郎の勘には度肝を抜かれる時がある。
「本当に大丈夫なのか? 佐奈は一人で溜め込むタイプだからなぁ」
「大丈夫だよ。だって学校楽しいし」
「ならいいけどさ。でもオレは、さっきのイケメン風の男は何か好きになれない」
唐突なことを言う慎二郎に、佐奈は思わず笑う。
「別に慎二郎が友達になるわけじゃないんだから。倉橋はオレの友達なんだし」
「そうだけど……。とにかくアイツにも気を付けてよね」
「アイツにも?」
駅付近に来ると、数メートル先を歩く元と倉橋が振り返り、手を振ってきた。二人は電車通学ではないので、いつも駅で別れるのだ。
佐奈は笑顔で二人へと手を振った。
「佐奈ぁ……佐奈はホント、全然自覚してないよな」
呆れたように大きなため息を吐く慎二郎に、佐奈の口はムッとしたように歪む。
「自覚って、何の自覚だよ」
「いい? 佐奈はもっと警戒心ってものを持つようにしないと」
「何に対してのだよ」
自宅までの道中、慎二郎はずっとぶつくさと佐奈に文句を言っていた。流石の佐奈もうんざりとし、後半はほぼ聞き流していたのは秘密だ。
風呂から上がった佐奈は、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、ごくごくと喉を潤していく。一息ついたところで、ふとリビングのソファで誰かが横になっているのが目に入った。
キッチンからだと足しか見えない。テレビが消えているため、寝ている確率が高い。佐奈はペットボトルをキッチン台に置くと、ソファに近づいて行った。寝ていたのは優作だった。
「……優作、こんな所で寝たら風邪引くよ」
ゆさゆさと優作の肩を揺さぶると、優作の綺麗な眉が僅かに寄る。
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