43 / 141

第43話

 小学生の時、体育で鉄棒が出来ず深く落ち込んでいたときも、放課後教室まで迎えに来たこともあった。偶然かもしれないが、時々慎二郎の勘には度肝を抜かれる時がある。 「本当に大丈夫なのか? 佐奈は一人で溜め込むタイプだからなぁ」 「大丈夫だよ。だって学校楽しいし」 「ならいいけどさ。でもオレは、さっきのイケメン風の男は何か好きになれない」  唐突なことを言う慎二郎に、佐奈は思わず笑う。 「別に慎二郎が友達になるわけじゃないんだから。倉橋はオレの友達なんだし」 「そうだけど……。とにかくアイツにも気を付けてよね」 「アイツにも?」  駅付近に来ると、数メートル先を歩く元と倉橋が振り返り、手を振ってきた。二人は電車通学ではないので、いつも駅で別れるのだ。  佐奈は笑顔で二人へと手を振った。 「佐奈ぁ……佐奈はホント、全然自覚してないよな」  呆れたように大きなため息を吐く慎二郎に、佐奈の口はムッとしたように歪む。 「自覚って、何の自覚だよ」 「いい? 佐奈はもっと警戒心ってものを持つようにしないと」 「何に対してのだよ」  自宅までの道中、慎二郎はずっとぶつくさと佐奈に文句を言っていた。流石の佐奈もうんざりとし、後半はほぼ聞き流していたのは秘密だ。    風呂から上がった佐奈は、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、ごくごくと喉を潤していく。一息ついたところで、ふとリビングのソファで誰かが横になっているのが目に入った。  キッチンからだと足しか見えない。テレビが消えているため、寝ている確率が高い。佐奈はペットボトルをキッチン台に置くと、ソファに近づいて行った。寝ていたのは優作だった。 「……優作、こんな所で寝たら風邪引くよ」  ゆさゆさと優作の肩を揺さぶると、優作の綺麗な眉が僅かに寄る。

ともだちにシェアしよう!