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第47話

 優作が上半身を起こそうとするのを見た佐奈は慌てて駆け寄り、優作の肩を押してベッドへと押し戻した。 「ちゃんと寝ておかなきゃ……って、めちゃくちゃ熱い……」 「佐奈」  優作の額に触れた佐奈の手のひらに、一気に熱が伝わる。頬も赤く、紺碧の目も少し潤んでおりとても辛そうだ。 「熱計った? 先生はどうしたんだろ」  体温計を探しに行こうと佐奈がベッドから離れようとすると、その手首を掴まれた。 「優作?」 「佐奈、何でここに?」  佐奈は優作に掴まれた熱い手を握り返し、申し訳なかったと眉尻を下げる。 「優作ごめんね。昨日おかしいって思ってたのに、ちゃんと気遣ってあげられなくて……。ここには丸谷さんが連れてきてくれたんだ」 「丸谷が……。と言うか、佐奈が何で謝るんだよ」  佐奈へと笑みを見せているつもりなのだろうが、相当辛いことが分かる口元だけの笑み。早く家に連れて帰って、ふかふかのベッドで休んで欲しいが、このまま一人で帰すわけにはいかない。自分も一緒に帰ろうと、優作の手を離そうとした時、何故か優作に強く握られる。 「優作? オレも一緒に――」 「深山、大丈夫か?」  涼やかで心地の良い音色の声が深山と呼ぶ。二人共に深山だが、呼ばれているのは恐らく優作だろう。  佐奈が振り返り視線を上げると、優作の担任である三國が心配そうにベッドを覗き込んでいた。そして佐奈がいることに驚いたのか、三國のメガネの奥の漆黒の目が僅かに見開かれた。 「あぁ……えっと、確か深山の弟だったな」  三國はメガネのブリッジを上げ、チラリと佐奈の左手へと視線を移した。

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