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第48話

 佐奈の左手は優作が握っている。兄弟で手を繋いでるなど、おかしいと思われたのではと、佐奈は咄嗟に優作の手を振り払う。 「は、はい。弟の深山佐奈です」  佐奈の挨拶に三國はおざなりな笑みを見せ、直ぐに優作へと意識を向ける。  男のくせに唇が赤く、妙な色気が漂う。 「深山、お前もう帰れ。鞄も持ってきたから」 「あぁ、そうする。サンキュー」  優作が上半身を起こそうとするのを佐奈は支えようと手を伸ばしかけた。それよりも早く、佐奈の横から白い手が伸び、そして優作の身体を支える。 「いや……自分で起き上がれるし……」  三國の身体をソッと押す優作だったが、熱のせいでふらつき、結局は三國にしっかりと支えられる羽目となった。 「悪い」 「病人が気遣うんじゃねぇよ」  ベッドから降りた大きな優作を、三國は自身の肩に腕を回させる。  佐奈は何となく疎外感を感じた。この二人は教師と生徒というよりも、友人同士のように見える。何より優作が全く気を使っていないことが、そう見えてしまう大きな要因でもあった。 「あの、オレ自分の鞄取ってくるから――」 「いや、君は授業に戻りなさい。深山は私が車で送って行くから。こんなフラフラな状態の彼を歩いて帰すなんて出来ないからね」 「あ……そうですね。すみません、宜しくお願いします」  佐奈が三國に頭を下げていると、その頭にふわりと熱い手が乗った。顔を上げると、優作の蒼い目が佐奈を見つめていた。 「佐奈、悪いな。そうだ、帰ったらさ、リンゴ摺ってくんねぇ?」 「うん! 優作それ好きだもんね。それまでちゃんと大人しく寝ておいてね」 「あぁ、もちろん」  二人で微笑み合っていると、三國が焦れったそうに肩に回された優作の腕を引っ張る。

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