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第50話

「あんなに体調崩すまで放っておくなんて。ご両親は留守なんだから、君がもっとしっかりと見ておいてあげないと」  メガネの奥の冷々とした目。少し険のある口調。佐奈はここで気付かされた。どうやら自分はこの三國という教師に好かれていないということを。とても好意的ではない目付きをされれば、嫌でも気付かされてしまう。 「すみません……。以後気を付けます」 「分かってくれたらいいんだよ。彼は大事な生徒だからね」  三國は佐奈に微笑むと、直ぐに背を向け視界から消えて行った。 「なんだよあれ。何かすげぇヤな言い方じゃなかったか? 佐奈は深山先輩の母ちゃんじゃないっつうのに」  憤慨する元に、佐奈は苦笑いで返す。それしか出来なかった。そんな佐奈に倉橋は何か言いたげにしていたが、結局口を開くことはしなかった。  三國のことで色々と思うことはあるが、今はそれよりも優作の方が心配だった佐奈は、急いでスーパーで必要な物を買い、家へと帰る。  とりあえず何か胃に入れてから薬を飲ませようと、佐奈は鞄を扉の横に投げると、キッチンへと直行する。そこで佐奈は直ぐに変化に気付く。 「え……」  食器洗い器に、皿と包丁があるのが目に入った。 「優作……自分で?」  いや、優作は佐奈にリンゴを摺って欲しいと自身で頼んできた。それに熱で朦朧としている中、自分で用意出来るとは思えない。そして何より、そもそも優作自身がキッチンに立つということがほとんどない。ということは、誰かがキッチンに立ったということだ。  佐奈の心臓が妙な早鐘を打つ。生ゴミを捨てるゴミ箱のペダルを踏み、中を覗くとリンゴの皮が捨てられていた。 「先生……がしたんだ」

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