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第51話

 佐奈はそっとリビング内を見渡す。そしてリビングのガラステーブルの上に、置きっぱなしになっている物を見つけた。  ガラステーブルに近付いた佐奈は、二つのビニール袋の中をそっと覗く。中には薬と、体温計のから箱、熱冷ましのシート、果物などが入っている。 「わざわざ買ってくれたんだ……」  感謝すべきことだ。佐奈もそれは分かっている。だが相手が三國だと思うと素直に、感謝出来ない佐奈がいる。  何より勝手にキッチンに立たれたことが一番腹立たしい。ここは佐奈の聖域だ。家族でない他人に立たれ、侵された気分になる。  親が留守なのだから、具合の悪い生徒の面倒を見るという事はあるかもしれない。それも十分過ぎる程に分かっている。  何も三國は悪くないのだ。良かれと思って、優作のためにここまで面倒を見てくれたのだから。  だが佐奈は悔しかった。誰よりも自分が真っ先にリンゴを摺って、薬を飲ませて、傍にいたかった。我が儘で自己中心的であろうと。 「優作がしんどい時に、何考えてんだオレは……」  佐奈は気持ちを切り替えるために軽く頭を振って、優作の部屋へと向かった。  アンティーク調の美しい木彫りが施された白い扉を、佐奈は小さくノックする。返事に期待はしていないため、佐奈は直ぐにソッと扉を開け、中へと入った。  広さは佐奈の部屋より少し広めで約29平米。一人部屋としてなら快適に過ごせる広さだ。  クイーンサイズのベッドに、机、ソファ、テレビ、本棚、オーディオと、佐奈の部屋よりも物がある。 「優作……」  佐奈は物音を立てないよう、小声で名を呼び、ベッドを覗き込む。額には冷却シートが貼られ、優作はぐっすりと眠っていた。

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