「んん……」 　抵抗をする佐奈だったが、本当は力など大して入っていない。形だけの抵抗だ。 　例え間違われていたとしても、優作とキスをすることなど、この先絶対にないだろう。だから今この瞬間だけでも、佐奈は幸せを感じていたい。優作の目が覚めるその瞬間まで。 「くち……て」 　熱に浮かされた不明瞭な囁き。だが佐奈にはちゃんと優作の言葉が届く。 　おずおずと口を開くと、待ちわびていたかのように、直ぐに優作の舌が入ってくる。佐奈はキスも初心者だ。いきなりの深いキスにどうしていいか分からず、ややパニックになる。 「あ……ふ……ゆう……」 　戸惑う佐奈を余所に、優作の舌は佐奈の咥内を隅々まで味わい尽くす。経験値ゼロの佐奈には応えることも出来ず、ただ優作にされるがままになっている。 　その中で優作の巧みな愛撫は、佐奈の思考をとろとろに溶かしていく。経験したことのない甘い快楽。下腹部が熱くなっていくのが分かり、焦った佐奈は優作に知られたくないと身を捩る。 「んん……」 　その動きのせいか、優作の手が次の段階へと佐奈のトレーナーの中へするりと入ってくる。脇腹を撫でられ、佐奈の身体は過敏に反応する。性に対しての免疫がないことを痛感してしまうと、一気に羞恥心を煽られてしまう。 　だが優作の手が胸の辺りに触れてきたことで、佐奈は瞬時に優作の手を握った。胸など触られたら男だと分かってしまう。佐奈だとバレてしまう。 　どうにか脱け出せないかと奮闘する佐奈の身体に、突然ずしりとした重みが加わった。 「なっ……」 　驚く佐奈の上に優作が倒れ込んできたのだ。パニックで必死にもがく佐奈だったが、優作は電池が切れたかのようにピクリとも動かなかった。