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第62話

 ここ最近、元や倉橋はずっと佐奈を気遣ってくれていた。それなのに、佐奈は自分のことで精一杯となり、心配ばかり掛けて、しっかり二人にフォローもしていなかった。  佐奈はそんな自分を殴ってやりたかった。 「ごめん……本当に」 「なんで深山が謝るんだ? 辛い時にムリして元気を装ってるほど、辛さは増していくことがある。特にセクシャルマイノリティな俺らは、相談する相手がいないから余計辛いんだ。だから深山が一人でため込んで、沈んでしまうのは当然のことだよ。でも、ゲイの俺が深山の友人になって、深山が気になって……それに気付くことが出来た。好きな人が誰を見てるのかって結構分かってしまうもんだし」  倉橋は同じ男でもカッコいいと思ってしまうほどに、爽やかに笑う。重くならないように話していることが佐奈にも良く分かった。 「……そんなにオレって分かりやすいのか?」 「いや、ノンケの安西は絶対に気付かないだろうな。言っただろ? 俺はゲイで、しかも気になってる相手のことって良く見てしまうもんだし、だから気付いたんだよ」 「そっか……」  優作のことをずっと見てきているのに、誰が大事な人なのかが佐奈には分からない。いや、知りたくないと言った方がいいのかもしれないが。 「だからさ、深山が色々考え込んで辛い想いをしてると思うと、なんかほっとけなくて。特に深山は血が繋がってないとは言え兄弟だからとかで悩んでるだろ? しかも三國のことでも悩んでるようだし。ま、急にこんなこと言われても深山は困るだろうけどさ」  倉橋は自嘲気味に笑う。  倉橋がゲイだとか、自分の気持ちがバレているだとか、まだ佐奈の中で全く整理が出来ていない。しかし、倉橋が佐奈のために温かい心で包んでくれようとしていることは伝わっていた。

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