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第67話

 ドアを開けると意外と広く、横幅二、三メートルはあり、雨風も凌げる完璧な渡り通路になっていた。階段とフラットな部分が等間隔にあり、体育館まで直接繋がっている。体育館側からはこの通路は通れないように、通路側のみに鍵がしてあるという。鍵はノブを回せば解錠され、扉が閉まれば自動で施錠されるようだ。 「普段でもここを通れたら、すごく近くていいのに」  窓からは裏庭の色とりどりに咲き誇る花たちの光景が広がる。佐奈はフラット部分に立つとガーデンを眺めた。   「あ……」  佐奈の目に直ぐに飛び込んできたもの。ここから約五十メートル先。目を凝らすまでもなく、煌めくシャンパンゴールドの髪の持ち主はこの学園ではただ一人。  優作が白いベンチに深く腰を掛け、少し俯いているのが分かる。きっとポカポカの暖かい陽気のせいで、眠っているのかもしれない。 「あの人……」  窓に突いた佐奈の両手には、汗がじっとりと滲み出てくる。心臓が嫌な音を立て、佐奈を余計に不安にさせる。  優作の傍には三國。スケッチブックを置いた三國は、ゆっくりと優作の傍へと歩み寄っている。  美術部のモデルと元は言っていたが、そうではなく三國のモデルなのかもしれない。どこを見渡しても生徒の姿など何処にもないからだ。  もしそうであれば、優作の大事な人とは三國のことなのではと、考えたくもない事が頭に浮かぶ。 「そうだよ……先生は男なんだし……そんなわけが──待って……なんでそんなに近付くんだよ」  佐奈は窓にへばりつく。近付くなと念じても届く訳がなく、三國はベンチの背もたれに手を置き、優作へと身を屈めた。

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