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第69話

「いまオレの存在が邪魔なら佐奈の中で消してくれていいから、今だけは傍にいさせて……」  一体なぜ分かるのかが不明だが、佐奈が弱ると駆け付ける慎二郎。  本当は一人でいたい気持ちもあった。でも、こうして慎二郎が傍に居ることで安心している佐奈もいた。きっと一人だと余計に要らぬ事を考えてしまいそうだからだ。  今朝までギクシャクとしていたのに、ずっと待ってくれていた事を思うと、佐奈の心が僅かにだが温まった。 「慎二郎どうしたんだよ。邪魔なわけないし」  慎二郎の背中に回した手を、佐奈は数度優しく叩いてから、そっとその腕の中から抜け、微笑んだ。しかし上手く笑えていなかったのだろう。慎二郎は辛そうに眉を寄せた。  そして家に着くまで慎二郎は一言も話さず、影に徹していた。 「ただいま」  リビングのドアを開け、先に慎二郎をと場所を空けた佐奈だったが、慎二郎は中へ入らず立ち止まる。 「なぁ、佐奈……」 「うん?」 「最近ユウが遅いのは何で?」  佐奈の表情が一瞬固まったが、直ぐに悟られないようにと佐奈は少しの笑顔を作った。 「なんかね、放課後モデルしてるみたい」 「は? ユウがモデル? あり得ないだろ、それ」  慎二郎も優作がモデルなどに全く興味がないことを知っているため、全く信じてないようだ。 「うん……今までの優作ならあり得ないよな。でも本当。きっとその人のことが好きなんじゃないかな? だってそうじゃないと、あの優作が引き受けるなんて考えられないし」  三國が優作に好意を寄せていることは、今日のことではっきり分かった。優作の気持ちはまだ分からないが、少なからず想っていることは確かだと佐奈は思っている。  いや、もしかすると既に付き合っているのかもしれない。学園内で堂々とキスをするのだから。

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