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第75話

 確かにそれが最終的な目的だ。だが慎二郎に言われたからだとか、そういう事が全て吹き飛び、佐奈の口から思わずとこぼれ出ていた。  優作はそんな佐奈に少し驚いた様子だ。 「あ……ごめん。そんな簡単にやめられるわけないよね」 「そうだな。やめるか」 「え?」  今度は佐奈が驚く番となる。 「やめる? オレもつい口にしたけど……。先生に頼まれてるんだろ? それに……」  優作は三國のことが好きなのではと、佐奈の中ではその疑いはまだ消えていない。 「それに?」  優作に真っ直ぐと青い目を向けられる。  不純な気持ちでやめて欲しいと佐奈は言っているため、真っ直ぐに見返すことが出来ない。 「そ、それに……先生は大事……だろ?」 「先生は大事って……」  優作の困惑の声。  踏み込み過ぎたかと、佐奈は直ぐに訂正しようと顔を上げた。だが優作は同時にたまらずといったように噴き出す。  おかしそうに笑う優作を、佐奈は何故笑われているのかが分からず怪訝に見つめる。 「佐奈、お前その表現おかしいだろ。三國(先生)が大事だとか鳥肌立ったぞ。三國は担任という認識しかないからなぁ」  佐奈の顔は一気に真っ赤に染まる。 「ち、違うって! ほら、先生に嫌われたら色々内申とかに響くことがあるじゃん! だから先生は大事って。優作こそ変に取らないでよ」 「あぁ、なるほど、そういうことね。悪い」  佐奈は大きく首を振る。  弁解して、優作のせいにしつつ、佐奈の内心は大きく浮上していた。  もしかしたら本当に慎二郎の言うとおりに、あの時のキスはその日限りのような女性にしたのかもしれない。あるいは、他に大事な人がいるのかもしれない。だが、その相手が三國でなかったことが、今の佐奈にとっては一番の吉報と言えた。  

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