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7-どうにも[たまらない]

サヤちゃんは可愛くて、優しくて、エロい。 俺が『可愛い』『好きだ』と言えば、嬉しそうに照れて笑う。 そして、少し強引にされるのが好きだ。 そんなサヤちゃんに合わせて、電話でエロい要求をすれば、はじめこそ嫌がるものの、結局恥ずかしそうなのにノリノリで、なんだってやってくれる。 最初は、またあの喘ぎ声の録音を聞かせてほしいというお願いだった。 ツンデレ風にキャラをつくったサヤちゃんに嫌だと断られても、俺はその可愛いさに嬉しくなってしまう。 何度も頼み込んだら、サヤちゃんは録音していた音源を聞かせてくれた。 さらにお願いすると、新規で録ってくれて……。 もちろんその声は色っぽくて、たまらなく興奮した。けど、それ以上に、サヤちゃんが俺のためだけの録音をしてくれた事が嬉しくて、幸せで、感動した。 感動しながらも、それらはしっかり『使わせて』もらった。 一年前には10代半ばですでに性欲が枯れ果てたと思っていた。 SAYAの声に萌えて少し潤いを取り戻し、欲情に気づいてからも、正直かなり淡白だったと思う。 けれど、やっと同年代の男子の性欲に追い付いて来たような気がする。 電話越しに生でイヤらしい声を聞かせてよ? なんて言ってみた時も、断られるってわかってた。 それでも何度も言い続けていると、なんとサヤちゃんはOKしてしまった。 俺だからOKしてくれたのか、それともついつい流されてしまいやすい性格なのか……。 多分、後者だろう。 サヤちゃんの今後がちょっと心配だけど、生声はしっかり聞かせてもうことにする。 生でとなると、録音よりまどろっこしくて、無言の間があったり、無駄な時間も生じる。 でも、俺にはその時間すら大切だった。 録音だったら、もしサヤちゃんが他の奴のことを考えながら録っていても、俺にはわからない。 一緒に居られる時間の長さとなると、牟田や沢木など、常にそばにいる奴らには、どうやったって勝てない。 だからこそ、サヤちゃんの一日のうちで、俺だけのことを考えてる時間をちょっとでも増やしたかったんだ。 それに……。 「ん……ぁ……んふぅ……」 控えめに電話の向こうのサヤちゃんが声を漏らす。 「ふ……ふは……」 と、耳をくすぐるような吐息が続く。そしてまた。 「んっっぁ……はぁっん……」 鼻から抜けるような嬌声。 サヤちゃんは男のわりには細くて綺麗な指をしている。 その指が、今、あのしまった身体の上を踊っているんだ。 シーツだろうか?ほんのかすかな布ずれの音で身体をよじる気配も伝わる。 「ん……んぁっ……はっっ……は……は……」 夏にプールで見たサヤちゃんの身体が脳裏に蘇る。 熟しはじめた実のような、かすかにぷっくりとした乳首を指で弄んでいるんだろうか。 「サヤちゃん、乳首気持ちいい?」 「ん……ぁ……や、そんな……恥ずかしい」 「恥ずかしいってことは、やっぱりさわってるんだ?」 「……ふ…………」 息をつめ、羞恥する気配が伝わる。 「サヤちゃんの大好きな乳首、なめしゃぶって可愛がってあげたい……。ね、想像してみて?」 「ふ……ぁあっ……ん!んっっんんっ!」 小さく声が弾み、堪えるような声が続く。 サヤちゃんが、俺にふられている所を想像して気持ち良くなっている。 そのことに、たまらなく興奮した。 イヤラシく緩んだ顔を見てみたい。 弄ばれて赤く色づく乳首をそばで見たい。 けど、俺とサヤちゃんの関係は、濃密なのにどこか遠い。 サヤちゃんの声もスマホ越しで、現実的な距離だってすごく遠い。 春に見てしまった着替えの最中のサヤちゃん。 そして、イヤラシく熟れた乳首をした夏のプールのサヤちゃん。 サヤちゃんをたった数ヶ月でこんなにエロい身体に開発したのは誰なのか。 俺が与えてもらえるのは声だけなのに、あの身体に直にふれさせてもらえる人間がきっとどこかにいるんだろう。 …………。 今、サヤちゃんに特定の恋人がいる気配はない。 あの頃サヤちゃんは誰かとつきあっていただろうか? いや、つき合っていなくても身体の関係は結べる。 俺にすらこんなイヤらしい姿をさらしてくれるんだ。 ……俺なんかよりずっと濃密な時間をすごす誰かがいたっておかしくない。 まだ続いているんだろうか。 どうすればサヤちゃんに俺だけを見てもらえる? 俺は『サヤちゃんをこんなエロく開発した誰か』に負けたくなくて、とにかく俺のことで頭をいっぱいにしてもらおうと、どんどん要求をエスカレートさせていった。 ◇ 俺とサヤちゃんのスマホ越しの交流は続き、電話口で身体を熱くさせながら、可愛く声を震わせるサヤちゃんに、繰り返し好きだと伝え続けた。 サヤちゃんの可愛い声に夢中になりながらも、いつか本当に触れ合えたときのためのリサーチも欠かさない。 どこをどういう風にさわるのが好きなのか、しっかり確認する。 サヤちゃんが、 『一緒にして?いっしょがいい』 なんて言い出したから、一応俺も自分のモノに手は添えているけど、ほとんどにぎってるだけだ。 自分の息づかいのせいで、サヤちゃんの声が聞き取れないのは嫌だった。 サヤちゃんが 『あ……んぁ……きりたぁあっ!イイ……ぁあん!桐田もっ……いい?』 そんな風に聞いてきた時はしっかり対応する。 一人でするのが恥ずかしいから一緒にしろと言ったんだと思ってたけど、どうやらサヤちゃんも俺の声を聞きたいらしい。 『ん……ああ……桐田の声もっっ……もっと聞かせて?んぁん……!』 なんてしばしば催促してくる。 サヤちゃんのおねだりはかなり効く。 握ってるだけだった自分のモノがわかりやすく反応して、ちょっと手を滑らせるだけで、要望通りの『ハァ声』がでる。 オマケで『クチュ音』も聞かせてみたら、サヤちゃんが少し無言になった。 あ、引かれたかな……と少し焦った。けど、どうやら『ふぁぁっっっ!』と慌て、悦び、スマホをベッドから落としてしまったようだった。 俺なんかでそこまで悦ぶサヤちゃんがいまいち想像できない。 ……やっぱり、直接会いたい。 「サヤちゃん、指、もう入れちゃった?」 『ん……まだ。だって……』 「だって、何?」 『……何でもない』 「入口、なでて?」 『ん……』 「きもちいい?」 『うん。……でも……もう入れていい?』 うっっ……そんな……。 自分の指を入れるのに、俺の許可を求めるだなんて……。 可愛くって、愛おしくって、たまらなくなる。 「いいよ。サヤちゃん、今からそこに、入るのは何かな?教えて?」 『あ……そんな……やだ……』 「なんで?ちゃんと教えて?そして、優しくゆっくり差し込んで」 『……今から……ん……はぁ……』 「あれ?もう、入れちゃった?しかも動かしてる?」 『だって……んっ……ん……早く欲しかったから……。今日はなかなか入れていいよって言ってくれなかったっっ』 え……。 鼻にかかったちょっと掠れた声で、愛らしく拗ねられ、俺のモノは一回り力を増す。 『ぁっ……あん……あっもっと……ぁあっ』 「サヤちゃん……可愛い……」 『ぁはぁあっっ……桐田ぁ……ん……もっとシテ?あァっ!』 「ずっと我慢してたのなら、中の前の方のキモチいいとこグイグイ押して、いっぱい気持ち良くなって?」 『ぁあっ……や……それ、すぐイッちゃうからっっ!あァん!ヤダってっ!』 嫌だなんていいながら、俺の指示通りにしてるようだ。 素直すぎる……! 『も、ヤダ!オレ……あぁ!イク……やだっっ!もっとイッパイ……んぁ』 「じゃ、イクまえに、ゆっくり中全体を触って?」 『ぁはぁっはぁ……はぁ』 薄い知識で想像を膨らませ、あっさりイかせず、さらに大きな快感が得られるよう指示をしてみた。サヤちゃんはキツい快感の余韻に息を乱しながらも素直に従っている。 「胸もさわって?やんわり摘んでちょっとねじるみたいに」 『ん……は……コレ……スキ』 「そう、お尻とどっちがいい?」 『……それは……ちがうから……どっちも』 「今お尻もまだ指入れてる?」 『ん……。入ってる』 「じゃ、乳首少し強めにねじって、後ろもまた、気持ちイイとこさわって?」 『あぁ……ん……あっ……ああ……キタっん!』 「……はぁ……気持ち良さそうな声。可愛い。それだけで俺も気持よくなるよ」 そう言うと、電話の向こうでサヤちゃんが身体を跳ねさせるような気配がした。 『ぁあんっっ……!きりたっ!もっと……声聞かせて?オレ……あぁああっきりたっ!イイっ』 「色っぽい声……。はぁ……本当……興奮する」 『んぁ……あっ……桐田も良くなって?オレの……オレの中想像してっっ??』 サヤちゃんの要求に動揺した。 「っ……?! あ……ああ、さ、サヤちゃんの中すごく……イイっ」 とっさのことに、棒読みゼリフになってしまう。 けど、サヤちゃんが気にした様子はない。 『んぁっ……きりたぁっ止まんないっぁっ!……桐田の……あぁ……イイっ』 ……俺のモノで貫かれるところを想像してサヤちゃんが悶えてる……。 そのことに酷く興奮する。 『ぁあっチュウしてっ桐田ぁ。……あっあ……イク!』 サヤちゃんが俺の名前を呼びながらイった。 最近、サヤちゃんが興奮のうちに『チュウして』なんて口走ることがある。 キスだけなら、学校でだってできないこともない。 そう思うと、色素の薄いピンクの唇にふれたくてたまらなくなる。 けど、エッチな雰囲気に飲まれて口走ったことを真に受けるとバカをみることになりそうだ。 それでも……。 キスだけじゃなく……。 あの髪に、頬に、背中に……じかにふれたい。 サヤちゃんは俺と通話しているときは、まるで俺に夢中であるかのように振る舞う。 けど、こんなエッチなサヤちゃんが俺との電話だけで満足できるとは思えない。 サヤちゃんがスマホ越しとはいえ俺だけのものになるのは、多くても週にせいぜい三~四回。 俺と通話をしない週の半分を誰とどうやって過ごすのか。 その誰かには、スマホ越しでは見えないサヤちゃんの痴態を見せているんだろうか。 サヤちゃんはモテる。 そして、男も女もいけるんだ。 実際、キャアキャアと女子にまとわりつかれているところだってよく目にする。 後輩の女子なんかは、接点が少ない分、アプローチも露骨だ。 さらに、なんの遠慮もなくサヤちゃんにふれることのできる「男トモダチ」。 当然、俺の知らない交遊関係だってあるだろう。 ……俺にはライバルが多過ぎる。

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