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11-終話:これからも[俺だけに]2
俺はサヤちゃんが好き過ぎるせいで、サヤちゃんの言葉を素直に信じられないでいる。
付き合い始めて1カ月経ったというのにだ。
我ながら厄介な奴だと思う。
サヤちゃんは単純な所があるし、俺への気持ちだってある程度は本当だろう。
だから、仮に今はノリで言っているだけだったとしても、俺に対し繰り返し『好きだ』と言っているうちに、本当に心の底から好きになってくれるんじゃないか……などと考えてしまう。
別にサヤちゃんを信用できない人物だと思っているわけじゃない。
俺がサヤちゃんの『好きだ』を過大解釈し、期待しすぎて、自分勝手に裏切られたと思ってしまうような事になりたくないんだ。
でも、俺がサヤちゃんの好きという言葉を信じようと信じまいと、サヤちゃんは俺の恋人で、どうやら卒業しても付き合っている想定でいてくれているようだ。
サヤちゃんの将来のイメージの中に俺がいる。
こんな幸せなことはない。
俺もずっと一緒に居たいと思っている。
でも一年の頃の『恋愛経験豊富で、別れてもあまり落ち込んだ様子のない有家川 聖夜』が記憶にある俺には、恋人としてずっとそばに居てもらえるというイメージがまだ持てない。
だからこそ言わせたい。
サヤちゃんの心に染み込むように。
そして俺が実感できるように。
ワイルドで大きな口からこぼれ出る、あの可愛い声で。
そして、ちょっと男らしく決めた声で。
サヤちゃんの色んな声音で表情豊かに言って欲しい。
「真矢、だいすき……」
「好きだぞ、真矢」
「大好きだ。……真矢」
ねだればなんだってやってくれるサヤちゃんだから、少し恥ずかしがりはするものの、俺の求める言葉をしっかりと声にしてくれる。
けど、サヤちゃんの俺への気持ちを確かなものにするために言ってもらってるはずが、甘い吐息や表情にやられて、俺のサヤちゃんヘの『大好き』がグンと膨らむ結果となる。
俺の方は少しサヤちゃんに『好きだ』と言い過ぎたようで、普通に好きだと言っただけじゃ、サヤちゃんをときめかせるのはむずかしいと感じている。
だから……。
「サヤちゃん、すごく気持ち良さそうだ……」
「ん……んぁ……もう、もういいから……」
「『もう、いいから』何?」
サヤちゃんの乳首を口に含みながら、綺麗に筋肉のついた腰をなでると、もどかしげに熱い身体を擦付けてきた。
二人きりで過ごすのは、だいたいサヤちゃんの部屋。
「ああっ……もう、イジワル言うなよ」
俺の髪を無茶苦茶にかき回しながら、鼻にかかったような甘えた声をだす。
「意地悪じゃないよ。サヤちゃんがどうして欲しいのか教えて欲しいだけだ」
「……そんな……。真矢、お願いだから……。して?真矢が欲しい」
「うん……。どうして欲しいんだ?」
「もう!ヤダって!一つになりたいっっ!オレの中で……気持ち良くなってよ、真矢」
恥ずかしがり屋なサヤちゃんが思いつく範囲で、最大級の誘い文句だ。
自分のことばかりじゃなく、俺のことも考えてくれる、優しいおねだりにキュンとしてしまった。
「かわいい……サヤちゃん。大好きだよ」
入口に自分のモノを沿わせて、囁く。
すると、口を半開きにしたサヤちゃんの目がきらきらと潤んだ。
ここのくらいしなければ、俺の『大好き』で、サヤちゃんにときめいてもらえないように思う。
「……んぁっは……もっと奥まで挿れて……だいじょぶ……だから」
「うん。ゆっくりな?」
「まやぁ……だいじょうぶだから……して?オレ……真矢がキモチよくなってるトコ見たぃ……」
「ぅっ……。はぁ……もう、なんでそんな」
ちょっとくらいサヤちゃんをときめかせる事ができたとしても、すぐにその倍くらいドキドキさせられてしまうのが常だ。
「……もしかして真矢、イヤ?オレ……なんか変?」
不安げな顔で見当違いなことを言うところも可愛い……。
サヤちゃんの長い足を抱え上げ、ぐっと腰を進めた。
「イヤなわけないだろ!もう俺、サヤちゃんが可愛過ぎて、少しおかしくなってるから。自分勝手に気持ち良くなっちゃうかもしれないけど……文句言うなよ?」
「あっっンぁ!大丈夫……あぁっ。真矢の……好きにされたいっ。んぁ……あっっイイっ……!」
「……っっっっ!」
最奥まで深くつながり、ゆっくり入り口付近まで腰を引く。
つながった箇所から、俺の全てがサヤちゃん一色になっていった。
「サヤちゃん……かわいい……かわいい……ぁあ……もう!」
夢中でむさぼる俺を、紅色の頬をしたサヤちゃんがうっとりと見上げる。
言葉で伝えてもらわなくても、サヤちゃんが俺を好きだとわかる最高の時。
これが欲しくて俺はサヤちゃんとつながるんだ。
「ぁあっ!真矢……ぁああ!」
サヤちゃんが俺の腰に足を絡めてくる。
息が弾み、汗が混じった。
「ん……ぁふっ!くぁっ……もう、あっっもう!スキっっ。まやっっ大好きっっ!」
もちろん表情で伝えるだけじゃなく、言葉でしっかり気持ちを伝えくれればさらに嬉しくなる。
「サヤちゃん……俺も大好きだよ」
「んんっイイッ……ぁもうっ、だめっっっっっ!」
「……いいの?それともダメ?どっち?」
「わかんぁ……ぁアあっ!キた……あ……ふっくう!」
サヤちゃんの入り口が俺をぎゅっぎゅっぎゅっと何度も締め付ける。
「はぁっ……サヤちゃん、イキそうっ?」
「ん!ぁ……イく……まやっ!まや!ぁああァ!んっ!んっ!……はぁひ……真矢ぁ……すきぃ」
熱い身体をヒクつかせてイくサヤちゃんの甘い言葉で俺の身体も痺れる。
頭も心臓も壊れるんじゃないかってくらい興奮した。
余韻に身体を震わせ涙目になったサヤちゃんがボンヤリと俺を見つめてくる。
やっぱり、俺の『大好き』に比べて、サヤちゃんの『好き』の破壊力は凄まじい。
けど、それでも……。
「サヤちゃん……かわいい。好き。大好き」
まだ快感の波に漂うサヤちゃんの耳元で、気持ちをこめて囁く。
熱い身体が俺にギュッとしがみついた。
「真矢……。ずるい」
「どうして?」
「そんな声で言われたら……オレ……」
思わずニコリと笑ってしまう。
俺の『好き』でもサヤちゃんに少しは効果があるようだ。
「……その顔も……反則っ!」
なぜだかサヤちゃんの手で顔を隠されてしまった。
俺の気持ちがどれだけサヤちゃんに伝わってるのか、サヤちゃんの気持ちがどれだけ本当なのか、まだまだ心もとなく思うときもある。
けど、それでも。
「サヤちゃん……大好き」
俺の顔を覆う手のひらをそろりと舐める。
「ひゃ……」
高い声を上げてサヤちゃんが手を震わせた。
「……ばか」
「サヤちゃんは……?俺のこと、好き?」
「決まってるだろ」
「決まって無いよ。教えて?」
「……決まってるんだって。大好きなんだから。真矢……ほんと……大好き。すき……すきだ……」
夢見るようなまなざしで、その瞳に俺だけを映して、何度も好きだと口にするサヤちゃんは、確かに俺を想ってくれているように感じる。
「サヤちゃん……ほんと……かわいい」
お決まりのセリフに、うっとりとするサヤちゃんを誰にも渡したくないから。
「……大好き」
「真矢、もっかい言ってぇ?」
「サヤちゃん……大好き」
「もっかい……」
「サヤちゃん……大好きだよ」
「真矢ぁ……オレもすきぃ……」
俺は何度だって囁く。
サヤちゃんが俺だけを見てくれるように。
サヤちゃんの特別であり続けるために。
「真矢……ん……もっと……」
「サヤちゃん……誰にも見せたことのないサヤちゃんを俺だけに見せて?」
「全部見てる」
「全部?」
「こんなオレ……真矢にしか見せたことない。真矢にしか見せない。真矢だけに……見てほしい」
いくら俺が、サヤちゃんをときめかせようと思っても……。
どうやったってサヤちゃんが俺の上をいく。
「はぁ……。もう!サヤちゃん、かわいいっっっ!」
俺は、馬鹿の一つ覚えでこれしか言えなくなる。
それでもサヤちゃんは鋭い目をトロンととろけさせ、俺を見つめてくれる。
その目を、いつまでも、いつまでも、俺だけに向けてほしい。
演技じゃない本当の甘い喘ぎを、俺だけに聞かせてほしい。
そんな願いを込めて、初めての恋人の甘やかな声をつむぎ出す唇に、俺は何度も何度も熱いキスを捧げた。
《終》
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