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番外編:窓の月を見ていた3

持ち上げた膝を腕にかけてゆっくりと腰を動かし、サヤちゃんの『反応』を確認する。 横たわったままの大股開きにさせられ、少し恥ずかしがっているようだ。 足が開いているから結合部分の締め付けが少し緩んで心地いい。 持ち上げたままの足を抱いて、さっきより浅く、テンポよく動いてみた。 密着したサヤちゃんの身体にヌプヌプと優しくこすりあげられ、痺れるような快感がくる。 「あ……ああっ……ん!んんぁっっ!」 可愛い喘ぎが俺の耳をくすぐった。 もっと聞きたくて、緩急つけて腰を動かす。 俺は経験不足を補う為に、それなりに下調べをして知識を仕入れていた。 その時に、いわゆる四十八手というものが、ちょっとした違いしかなくても別の体位として区分されるのがなぜなのか、不思議に思った。 もちろん、数合わせという側面もあるだろう。 けれど実践してやっとわかった。 確かに足を開いているのか閉じているのかなど、少しの違いだけで動きやすさや気持ち良さに違いが出る。 もちろん四十八手の型に縛られるつもりはないが、大した差は無いように見えても別のものに分類したくなるという理由がわかった。 どうした時に、サヤちゃんがどんな反応を示すのか、俺の興味はその一点だ。 俺より少し大きなサヤちゃんのモノを優しく掴んでこすり上げると、ふっと息をつめて、ソコを守るように背を丸めた。 すると自然と尻を突き出すこととなり、俺のモノにぐっと奥を突かれて身を震わせる。 奥を突かれるのは少し苦しそうだ。だけど、このヒクンヒクンと腰を揺らす愛らしい動きは、苦しさより昂りを擦られる快感の方が強いからだとみて間違いないだろう。 「ぁひんっ!!っ……あぁっンァッァア!」 またサヤちゃんの喘ぎが激しくなり、イヤイヤをするように顔を振り始めた。 抱え上げた足に軽くキスをしながら、様子をうかがいつつ円を描くように腰をすりつける。 「ウゥン!んぁ……はぁっあっ……あっ……また……なんか変わったっっ……」 サヤちゃんが戸惑いの声を上げた。 「さっきよりかなり……いや、今までで一番深く交われてるね」 「…………そ、そっっっっそういうっっ、だからっっ!そういうコト言うなよっ!」 「……?あまり深いとキツくてイヤ?」 「は……?あ、いや、激しくしなきゃ、大丈夫だけど…………」 「そう、良かった。俺はすごく深くつながれて嬉しいけど、サヤちゃんが苦しいのはイヤだから」 「え…………あ……そう……なのか……。オレは少しくらいキツくても、真矢がイイなら……その……」 「ダメだよ。サヤちゃんが苦しい思いをしてたんじゃ、俺は気持ち良くなれない」 「……!」 男らしい膝にチュ、チュ……と優しくキスをすると、サヤちゃんが目を潤ませて俺に手を差し伸べる。 「……真矢、まや……。お願いだ。ギュッて、ギュッてしたい」 なぜだか急に甘えてきたサヤちゃんがかわいい。 抜けないように慎重に移動して正面から覆いかぶさると、サヤちゃんがぎゅぎゅっと抱きついていた。 「どうした?」 「ん……わかんね。けど、オレも真矢を大切にしたいなって……ずっと……一緒に居れたらなって……なんか、そう思って。そしたら、ギュッてしたくなった」 たどたどしく気持ちを伝えてくれる。 愛おしい。 抱えきれないほどの想いが溢れ、心と身体が熱くなった。 サヤちゃんの頬をなで、柔らかな髪をなでる。 サヤちゃんもぎゅぎゅっと抱きついては、俺に顔をすりつけてくる。 「かわいい……。サヤちゃん。かわいい」 頬に、まぶたにキスを散らす。 「んぁ……」 熱い身体がすれ合っただけで、サヤちゃんが小さく可愛い声を漏らした。 どうしよう。 俺としてはこんな風に、身体だけじゃなく心を交えるようなふれ合いに、たまらなく幸せを感じる。 動かなくてもいいから、ずっとサヤちゃんの中に入ったまま、優しく包まれていたい。 けど、サヤちゃんはもっと激しく求められたいのかもしれない。 「あ……真矢、ゴメンな。邪魔した」 「邪魔だなんて、そんなわけないだろ?サヤちゃんに『大切にしたい』なんて言ってもらえて、すごく嬉しかった」 俺の言葉に、サヤちゃんがニヘーと頬を緩めた。 ああぁぁぁ…………かわいい……。 「真矢……もういいよ。好きに動いていいから」 「俺はこのままサヤちゃんの中に埋まって、優しくふれ合ってるだけでも……」 「ま、まやっっっっ……!ああもう……スキっっ!大好きだ!でも、そこまでオレのこと気遣ってくれなくても、ホント大丈夫だから!真矢にだったらムチャクチャにされたって平気だ!ほら、動いて」 サヤちゃん独特のポジティブシンキングで俺の希望は却下された。 サヤちゃんに無茶苦茶なことをするなんて考えられないけど、いつか俺の腕の下でサヤちゃんが快感で無茶苦茶になってしまう日が来ることを願って頑張ってみよう。 腰をすすめれば、充分にこなれたサヤちゃんの身体はすぐに快感を拾い、俺の理性を焼きつくすような可愛い喘ぎが耳をなぞる。 しかも、可愛いサヤちゃんの泣きそうなヨガり顔を目の前でたっぷりと見れるんだ。 『優しくふれ合ってるだけでも』なんて気持ちはすっかり吹っ飛んでしまった。 サヤちゃんの腰を抱えて浅く早く突く。 入り口に近いところは、ぎゅっと掴まれているみたいで気持ちがいい。 サヤちゃんもアゴを反らして快感に耐えている。 「んんーー……。んぁっ……ぁ……ぁあああん!真矢、こんな……んぁ……なんで?」 「なんでって……何が?」 「ああんぁアッ!んあぁっ!ん……なんで、こんなこと……できるんだ?どこで覚えたんだ?なんで……っ!オレ、おかしくなる……。はぁあ」 「どこで……って」 変な質問をするサヤちゃんに思わずフッと笑ってしまった。 「決まってるだろう?サヤちゃんの中で、ほら、今、こうして覚えてる最中だよ」 「んっっ……ぁはぁっっ……ホント……に?」 「じゃ、サヤちゃんは、こんな反応、どこで覚えてきたんだ?誰に教えられたの?」 「ぁ……それは…………」 口ごもるサヤちゃんにちょっと不満を覚えて、グイグイ中のシコリを刺激して答えを促す。 「誰か、言えないような相手……?」 「んぁっぁっっぁあっっ!そんなっ!真矢だけっ。誰かなんかいるわけない。真矢だけだ。知ってるだろう?」 「本当に?」 「だって、真矢がっ!通話しながらオレに気持ちいい声聞かせろって……アレコレ指示するからっ!」 「でも……俺は通話だけだったからね……」 わざと沈んだ声を出してみる。 「なんで……やだっ。真矢しか知らない。真矢だけ。真矢以外いらないっ」 単純なサヤちゃんは、不安げな顔で俺に抱きついてきた。 ああ……優しくしたいと思っているのに、ちょっといじめてしまった。 でも、これもきっと、サヤちゃんが可愛いのが悪いんだ。 チュ、チュと、頬や唇にキスを散らしながら、さらに高ぶってしまった気持ちをサヤちゃんの中に伝える。 「かわいい……。サヤちゃん、俺もサヤちゃんしか要らない。サヤちゃんだけだよ。大好きだ」 耳元で囁くと、サヤちゃんがブルリと震えて身を縮めた。 「両ひざ、自分で抱えてくれる?」 「えっっ ……こう……いや、ちょっとこれ無理。恥ずかしいっっっ」 自分から股を開いて捧げるようなポーズは、抱かれることに慣れていないサヤちゃんには、まだ抵抗があるらしい。 一瞬だけやってくれたけど、すぐに足を下ろしてしまった。 「じゃあ、せめて片足だけ抱えてくれる?」 「ん」 両足は無理だと断ってしまった後ろめたさからか、随分素直に応じてくれた。 長く形のいい足を抱え、長身の身体を少しくねらせ、はにかんで俺を見上げる。 「……ああ、綺麗だなぁ……」 「っっっは?キレイっっ??な、なんだソレ。なにバカなこと……」 バカと言われても……素直な感想だ。 伸びた足もよじれる身体も、美しくてめまいがしそうなほどだった。 「そうだ、サヤちゃんは綺麗って言われるより、可愛いって言われる方が好きだったね」 「い、いや、絶対嘘ってわかる『かわいい』は嬉しくないからっ」 「そうだね。サヤちゃんの表情や仕草はすごく可愛いけど、身体は美しく綺麗だ」 「やっっ……やめろっっ!さっきからなんだ!もうっ恥ずかしいっって!!!!」 律儀に片足を抱え上げたまま、反対の手で顔を隠して照れていた。 「耳も肩も真っ赤になっている。色っぽいよ」 「なっ……ヤダって。恥ずかしいって……もう。やめろ」 「あ、でも、胸はかわいい」 「ううーー。もうそれ以上言うなよ」 恥ずかしがるサヤちゃんの愛らしい乳首を吸って、耳元に口を寄せる。 そして低く甘く囁いた。 「恥ずかしいがってるところも可愛い」 「うううううううううう……バカ」 これ以上余計な事を言うなという事だろうか。 サヤちゃんが、唇を寄せ、舌先を甘えるようにチュッチュと吸ってきた。 「可愛い……」 唇の隙間から言葉を漏らすと、サヤちゃんはとろけた顔をして、俺の昂りをキュキュと締め付けてくる。 「んぁあ……」 そして自らの締め付けで甘い吐息を漏らした。 愛らしいおねだりに応えるように、律動を再開する。 湿った肌がこすれあい、クチュクチュと煽情的な音が立った。 「ぁあああ……ぁぁあ……ぁあ」 サヤちゃんが切れ切れの声を震わせ、ヒクンヒクンと長い足を跳ねさせる。 きっともう、限界が近いんだろう。 二人の気持ちと快感を解放させるため、俺はさらに強くサヤちゃんを求めた。 ◇ 今日は色々収穫の多い一日だった。 家に帰って自室でひとり思い返す。 とうとうサヤちゃんのお母さんに会うことができた。 これは、本当にうれしかった。 初めて家を訪ねた時は、会うことが叶わなかった。 この時は礼儀として挨拶をしておかないとという思いと、どんなお母さんなんだろうという興味が強かったように思う。 でも、恋人となって親に会わせてもらうというのは、俺の中では少し意味合いが違ってくる。 友人としての紹介だったけど、それでもサヤちゃんが俺のことを恋人として大切に想ってくれている証のような気がした。 それに、お母さんに俺がサヤちゃんのことをとても大切に想っていることを知ってもらえた。 お母さんも俺のことを気に入ってくれたようだった。 この調子で、少しづつサヤちゃんのお母さんに俺という存在を受け入れてもらえれば…………。 それから……。 サヤちゃんのことだから、今日もイチャイチャさせてもらえるんだろうなとは、思ってたけど……。 ああ……どうしてサヤちゃんは、あんなにも可愛いんだろう。 お母さんの前でちょっと子供っぽくなってしまったのを引きずってたのか、甘えんぼさんだったし。 サヤちゃんとのセックスは、どうにも舞い上がってしまって、まだまだ慣れそうにないけど、それでもそれなりに成果はあった。 反応が良いからって、あまり同じところ攻めすぎると嫌がり始める。 そのかわり小さな体位の変化もしっかり感じてくれる。 しばらくは、体位やポジション取り、角度などしっかりと意識してみるといいかもしれない。 それが良いかどうかはサヤちゃんの反応ですぐにわかる。 特に反応の良かった体位を中心にバリエーションをつけつつ、まだ試していないものも少しづつ試していこう。 あとホールドも大切だ。反応が良くても綺麗にホールドできていないとポジショニングの維持が難しい。 気持ち良くなると、サヤちゃんは無意識で逃げ始めるから、押さえ込みも必要になって来るかもしれない。 さらに『言葉』だ。 甘めの低い声で囁くと、サヤちゃんの反応がさらに良くなる。 少ししゃべりすぎだと思うくらいでちょうどいいかもしれない。 どれだけサヤちゃんが可愛くて、やらしくて、そんなサヤちゃんが大好きか、普段は少し控えている分、ここでたっぷり伝えよう。 俺がサヤちゃんにとってかなり恥ずかしい事を言ってしまったときの『ばかっ!』と言ってそっぽ向く様子も可愛い。 潤んだ瞳を恥ずかしそうに揺らす、サヤちゃんのとろんとした顔は俺の宝物だ。 もっと見たい。 サヤちゃんが恥ずかしがりながらも興奮するような言葉を、普段からできるだけ探しておこう。 ……それにしても。 俺が慣れてないからしかたないのかもしれないが。 とはいえ、セックスとはこんなにも頭を使わなければいけないものなのか。 相手の反応をみて、かける言葉を考え、次の一手をさぐる。 なかなかに極めるのは難しそうだ。 いや、別にAV男優を目指しているわけじゃないから、極める必要はないが、今はまだ俺と同じく不慣れなサヤちゃんが、すっかり慣れてきたとしても、物足りないと言われない程度にはなっていたい。 とはいえ、武術と同じように上達するための反復練習などできるはずもないしな。 …………美奈姉さんにエロいBLゲームの攻め役を押し付けられた時は憂鬱でしかたなかったけど、今となってみればあの経験が随分と役立っている。 人生、無駄な経験などないとは、本当だな。 気付くと古武術の鍛錬や、録音をした後のように、サヤちゃんとのセックスの振り返りと反省点の確認作業を行っていた。 いつも、武術の場合は兄さんに、声の場合は美奈姉さんに反省点を伝え、感想を聞くのだけど、この場合は…………。 そのときスマホに着信があった。 もちろん、サヤちゃんからだ。 「もしもし?真矢、なにしてた?」 弾むような、だけど少し照れまじりのサヤちゃんの声。 「サヤちゃん、かけてきてくれるなんて思わなかった。すごく、すごく嬉しいよ。俺もサヤちゃんの声が聞きたかったんだ」 「ホントに?」 「もちろん、本当に決まってるだろ。…………うん、今?今は……」 ああ、ちょうど良かった。 すぐに、今しがた行っていた振り返りと反省内容について話しはじめた。 けど、まだ序盤の序盤で、 「ばかっっっっっ!」 と言って、電話を切られてしまった。 …………。 ………………。 俺はショックで放心状態だ。 けれど、すぐにまたサヤちゃんから着信があった。 「もう、さっきみたいな話はやめろよ?」 開口一番釘を刺された。 でも、たしかにそうだ。 サヤちゃんの身体をどうすれば反応がよくなり、さらに良い反応を引き出すにはどうすればいいかなんて考察を話せば、サヤちゃんが恥ずかしがってしまうのは当然のことだろう。 …………つまり。 『サヤちゃんが、俺にどうされるのが好きか』を聞くんだったら行為の最中の方が、恥ずかしがる様子と身体の反応の両方を楽しめ効果的だということだ。 サヤちゃんと楽しく甘い会話を楽しみながら、ふと窓に目をやると、夜空に月が淡く輝いていた。 窓の月……か。 盗人(ぬすびと)に 取り残されし 窓の月 いつもなら、良寛(りょうかん)の句を思い浮かべていたはずだ。 けれど。 『窓の月』 ……横たわり、二人一緒に窓から見える月を眺めるられるという、風情ある由来で命名された体位でもある。 今日はこの優しく寄り添う背面側位から、はやる心をどうにか落ち着かせて挑んだんだ。 これからは…………。 窓にこの淡い月が姿を見せるたびに 俺の腕に抱かれ、小さくあえぐサヤちゃんの暖かな背中と、 サヤちゃんを満足させるために努力を続けると誓ったことを 思い出すことだろう。 《終》

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