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番外編:温泉に行こう!-1
注)エロくはなりません
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テレビで旅番組なんかやってても、いつも5秒も観ずにチャンネルを変えてた。
けど、チャンネルを変えるまでのほんの数秒に、お笑い芸人と俳優が旅館の部屋付きの白木の温泉で、くっつくようにして話しながら、楽しそうに浸かってるトコが映ってた。
あ、いいな、こんな感じ。
そう思った瞬間、テレビの中の二人が自分と真矢に置き換わってた。
二人で温泉入って、笑いあって……。うん。いい。
その後たまたま真矢から連絡があったから、温泉の話をしてみた。
オレが温泉に興味を持つってコト自体に驚かれたけど、真矢の方から一緒に行こうって誘ってくれた。
まあ、高校生のオレらじゃ旅館の温泉付きの部屋なんてのは無理だけど、日帰りでも二人っきりで海の見える温泉くらいなら入れるはずだ。
すげぇ楽しみ。
でも……。
真矢が「じゃ、楽しみにしてるから」なんて、イケメンボイスで甘くふふっと笑いながら言ったりするから。
なんか、ちょっと……。
いや、最初はほんと、風呂で笑いあって……なイメージだったんだけど。
そのあと……のぼせかけて立ち上がったオレを真矢が後ろから抱きしめて……汗とかぺろっと舐められたりして……。
なんだよ…なんて言いながら、振り返ったら、そりゃ、真矢の顔も温泉で赤くなって、汗ばんで、色っぽくて……当然チュウしちゃうよな。
抱きしめられたまま、振り返りながらのチュウだから、当然オレの尻に……いや、その……。
うん、まあ……当っちゃうような???
「何こんなトコでサカってんだよ」
なんて、わざとらしく言ったら、
「サヤちゃんだって。いや、サヤちゃんの方が……」
なんてちょっと前をさわられちゃったり?
うはっっ。
もう、ベッドの上でジタバタがとまらない。
当然温泉の中で最後までするわけにはいかないから……。
でも、お互いのカラダ洗いながら……真矢……絶対オレの胸とかさわりそう。
泡ついたてでヌルヌルっと洗われて、その間に何度も指で先っぽを弾かれたりして……。
あ、なんか、考えてるだけでのぼせそうだ。
前も当然洗われて……うっかり手が滑ったフリしてイタズラに後ろの……中まで洗われちゃったり??
い、いや、それは……それはない?
そこまでしたらもう……もう、ヤるだろ?
でも、温泉じゃヤれないだろ?
あぁ……もう風呂と真矢の両方にのぼせて、じらされて……うはっ。
でも、ま、抜くくらいならOKか?
いや、でも、そこでぐっと我慢して、我慢して……からのラブホっっ!
……金額どのくらいだ?
土日は確か値段が上がるんだよな。
とはいえ、旅館やホテルなんかよりはずっと安いはずだ。
あ〜。
でも、大きい道路沿いのラブホに、日中男同士で徒歩で入るって相当勇気いるな。
ラブホは無理か……。
あっ、あっっ、あ……青姦??
いや、無理だ、土地勘がないから、そんなチャレンジャーすぎるコトが出来る場所なんかわからない。
……やっぱ温泉でちょっと抜き合いするくらいかな。
いや、でもそれでも、いつもと違うから相当興奮するはずだ。
ああ……オレ、ベッドのうえで、ジタバタし過ぎだ。
ベッドが壊れたらどうしよう。
でも、真矢と温泉行くまでの間、何度も妄想しちゃって、ジタバタするんだろなっっオレ。
◇
サヤちゃんに温泉の話をされた時には驚いた。
そんな趣味なんか全く無さそうだったのに。
けど、わざわざ誘って欲しそうに話題を向けてきたんだから、その期待に応えたい。
俺の地元も一応温泉地ではあるし、サヤちゃんよりは温泉に詳しいはずだ。
今日サヤちゃんと待ち合わせたのは、サヤちゃんの住む市と俺の住む市に隣接した有名な温泉地。俺の地元の温泉より種類も豊富で安いのが特徴だ。
高校生でも気軽に訪れやすい。
本当は兄さんにバイクを借りられたら良かったんだけど、残念ながら用事があるようで無理だった。
公共交通機関を使っての移動となると、駅の近くの温泉がいいのかもしれないけど、サヤちゃんはちょっと温泉に興味を持ち始めたという程度だろうから、やっぱり魅力的なところに連れて行きたい。
「あ、ここ、足湯があるんだな」
駅で待ち合わせてバス乗り場に行くまでの間に足湯があった。
温泉地の駅には足湯などがあることも多い。
「ここは、有料だから、足湯に入りたいなら他にもあるよ」
「え、足湯って無料で入れるのか?」
「うーん、他の地域はどうか知らないけど、このあたりは無料が多いかな」
「へぇ〜、すげぇ」
足湯に無料のものが多いという事を知らない時点で、これまでのサヤちゃんの温泉への興味のなさがよくわかる。
バスに乗ってすぐに目的の温泉地に到着した。
近隣にいくつかある温泉地のうちで、一番温泉街らしい町並みのある場所だ。
そこで何となく町をブラブラし、展望台から湯けむりを眺め、お土産を見て、ソフトクリームを食べ、サヤちゃん念願の足湯にも入った。
ド定番のTHE温泉観光だ。
ガイドブックのモデルコースになりそうなくらいド定番だけど、サヤちゃんはすごく楽しそうだ。
サヤちゃんが湯けむりをバックに立ってるだけでサマになるし、店でくだらないお土産を見つけてはしゃぐ様子も可愛らしい。
ソフトクリームに頬を緩めたあと、同じくソフトクリームを舐める俺を見て、ちょっと恥ずかしそうな表情をしていた。
……よくわからないけど、また何かエロい想像でもしていたに違いない。
足湯につかり、他に人がいなくなった時に、控えめにだけど子供みたいにぱしゃぱしゃと足をばたつかせたりもして……。
その顔に似合わぬ無邪気可愛い仕草に、俺は萌え死ぬんじゃないかと思った。
他の人の前で見せる、がさつだけどワイルドキャラのままで、同じように足をばたつかせれば、それはそれでカッコいいんだろう。けど、俺はやっぱり『可愛いサヤちゃん』が好きだ。
子供みたいに無邪気な笑顔のまま、サッと色っぽい表情が混じったりする。
二種類の可愛いを同時に出されてしまうと、サヤちゃん以外見えなくなってしまうのは仕方がないだろう。
ぎゅっと手を握ったら、嬉しそうに口をムニムニさせていた。
ニヤけそうになるのを我慢してるのかもしれない。
ここが公共の場じゃなかったら、抱きしめてキスでもしてるところだ。
代わりに足で軽くサヤちゃんの足をくすぐってみた。
………。
感度良好。
くすぐったがる顔も可愛くてエロい。
うーん、足か。その発想はなかったな。
足裏どころか足首ですらけっこういい反応だ。
ベッドでサヤちゃんの長く形のいい足がビクンビクンと跳ねるのは、かなり色っぽいに違いない。
うん、今度こっそり開発させてもらおう。
昼はちょっとオシャレなカフェに入って、温泉たまごの乗ったパスタを食べた。
それから腹ごなしに街を歩けば、自然と肩の触れ合う距離になっていた。
こういうところなら、男同士結構近い距離で歩いていても違和感は無いらしい。
背中に手を回し歩いてるおじさん連中も、当たり前のようにいる。
「え…?またバス?」
目的地も知らずに俺に並んで歩き、着いたところがバス停だったので、サヤちゃんが意外そうな顔をした。
「ああ、ここも温泉街だけど、ここじゃなくって少し離れた場所にまた温泉街があるんだ。歩くとかなり大変だけど、バスだと五分ちょっとだから」
せっかく温泉に興味を持ち始めたんだから、サヤちゃんを上質な温泉に連れて行ってあげたかった。
その温泉は近隣の温泉の中でも、特に泉質がいいと言われている。
バスから降り立つと、先ほどの温泉街よりさらに濃密な温泉のにおいが漂っていた。
排水溝からも湯気が立ち上っている。
カップルや、外国人も多い。
ついてすぐにサヤちゃんがお土産屋さんをのぞき始めた。
ここが温泉だからだろうか。
サヤちゃんがお揃いのタオルを買いたがる。
変わったチョイスだけど、そんなサヤちゃんが可愛い。
それに、このタオルなら学校でも使える。
体育の授業後に、俺とお揃いのタオルで汗を拭くサヤちゃん……。
……ちょっといいかもしれない。
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