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5−いやいや。[R18はなぁ]

しばらくしてまたゲームに参加しないかと声がかかった。 最初にオレを採用してくれた乙女ゲームのメンバーが中心になって作るものだが、今度はR18のBLゲームだった。 当然、オレは即断りのメールを書いた。 ……断りのメールを書いていた。 けど、アメーディオ様が脳裏にチラつく。 あのサークルの作るゲームなら、R18でも甘くてフワフワしたものかもしれない。 そしてもしかしたら……。 断りのメールを入れるつもりだったのに、キャラ設定や他のキャストのことを質問していた。 オレは主人公でセリフは比較的少なめらしい。 とはいえ相手が5人いるので、結果的にはそこそこの量になる。 主人公総受の甘めな異世界トリップもので、飛ばされた先でさまざまな男性キャラと事件を解決しながら交流するという展開のようだ。 そして一番気になっていたキャスト。 そこに山田(やまだ)(りき)が(予定)としてあった。 名前を見ただけでドキドキと心臓が暴れる。 もう二度と見ないと心に決めていたあのR18BLゲームのサイトは、履歴をたどって何度も見てしまっていた。 部屋に鍵をかけてヘッドホンをする。 そしてキーボードの上に手がある事を確認してから山田力のセリフを聞く。 そうすればうっかり股間に手を伸ばすような事はない。 今回のゲームは主人公の総受。ということはもちろん山田力は攻キャラだよな。 そんなことを考えながら書いた返事の内容はあまり記憶に残っていない。 はっと気付くと送信を押してしまっていた。 焦って送信済みメールを確認する。 変な事は書いていない。 いや、オレ的には断るつもりだった『そんな事にはならないだろうけど、バレたら相手に迷惑がかかる可能性がゼロではないから一応受けちゃいけないってことになってるR18』を受けてしまった。 やってしまった。 けど、今さら断りのメールを入れるなんてできない。 いや、ウソだ。 オレは、これをやりたい。 主人公に指名されて喜んでいる。 山田力とのからみだと知って、さらに浮かれてしまっている。 ベッドの上で制作の顔文字女に土下座の真似ごとをした。 すまん。そしてサンキュウ! さらに念を送る。 他のキャストに断られても山田力には絶対断られるな。 全員に断られたら、いっそ攻めキャラ全部を山田力にやらせてもいい。 頼む顔文字女。 ガンバレ顔文字女。 そして次の日、すぐにシナリオが送られてきていた。 早くて驚いたが、元々進行していたけど事情があってしばらく中断していた企画を一気に始動させたのだそうだ。 今回のゲームはまだ告知サイトにリリース時期を明記してないらしいが、このまま順当に行けばリリースもかなり早くなるらしい。 数日後、シナリオを読み込み、メールで質問などを投げかけるついでにさりげなく他のキャストが決定したのか聞いてみた。 顔文字女は山田力をキャスティングできたらしい。 オレもがぜんやる気がでた。 正直『R18』の文字にビビリぎみではあったが、これで乗り越えられそうな気がする。 ……なんで山田力がいたら乗り越えられるって思うのか。ちょっと変な気もするが。 いや、あいつはR18経験者だ。そう、先輩みたいなもんだ。 オレが心強く思うことは不思議じゃない。 不思議じゃない……よな? ◇ 繁華街の公園でバカ騒ぎをしている。 今日はカズとフウ太が一緒だ。 最近宅録(たくろく)してたせいで付き合いが悪かったから、『オンナを優先しすぎだ』と文句を言われた。 オンナじゃない。 けど……。 こうやって発散しないと何だかモヤモヤしてくる。 健気な受キャラになりきってセリフを録音しているだけなのに、オレの中のオンナな部分が増大していってるような錯覚を覚える。 このまま、あんなセリフばっか言ってると、私生活でも 『あ……そんなボクは…怖がってなんかいないもの!』 みたいなコトを言い出すヤツになってしまいそうだ。 どの言葉をとっても、現実のオレには似合わない。 『いないもの!』って……。 ゼって―いわねー。 それに『あの』シーン。 どうにも……上手くできない。 なんか違う。 こんなじゃない。満足な出来にならなくてイライラする。 気にせず、録ったものをそのまま使おうかと思ったけど……。 いや、べつに山田力に負けてるとかそんな事を意識してるわけじゃない。 自分が満足いかないものを出すのが嫌なだけだ。 目の前ではカズとフウ太がAVの話をしている。 フウ太は女優が本気でヨガってるかどうかが分かるなんて自慢げに言ってる。 じっさい本気で感じてるかどうかなんて本人にしか分からないだろうし、本気っぽくみえるけど、女は全員演技してるなんて話も聞く。 だから男がそれを見抜くのは難しいんじゃねぇかと思う。 しかもカズやオレならともかく童貞フウ太は絶対無理だ。 「ぜってーわかんだって。演技してる女優は見て見て感が強くてよ、あたしこんなに気持ちいいのぉってアピールが強いんだよ。ホントに感じてるときは、演技も意識してんだけど、やっぱあふれるものがあるっつーか、わかるだろ?なぁ」 「溢れるものって。フウ太の趣味からいくと○連発ぶっかけとか潮吹きとかどうせそんなだろ」 「てか、連射だとあふれてんのは男優のほうか」 「あんな耐久レースみたいなモンよく飽きねぇな」 「でも、そうなると女優は別に感じる必要すらなくね?」 「いや、だから!ぶっかけとか忘れて?」 畳み掛けるように突っ込むオレとカズに、フウ太がジタバタする。 こんなばかばかしい掛け合いがホント楽しい。 だんだん酔っぱらいも増えて来たので場所を移動し、ラーメンを食ってからダラダラ歩いて帰った。 やっぱ友だちとこうやってくだらねぇ話をする時間も大切だ。 ベッドに寝転び、なんの飾り気もないオフホワイトの天井を見上げる。 バカ話で気晴らししたのに、家に帰るとまた『あの』シーンに悶々と頭を悩ませてしまう。 喘ぎを挟みつつのセリフがある。 セックスの時に話すとしても、喘いでる最中に話したりしない。 記憶を掘り起こしても自分の本気の喘ぎ声と言うのがよくわからない。喘ぐというより、漏れ出たようなうめき声なら記憶にはあるけど。 可愛い受にうめき声は似合わない。 主人公サリュの身体に埋め込まれた『聖なる玉』の力を解放する為に、その『鍵』となる攻キャラの身体に秘められた『神樹』の力を流し込み、サリュの感情と感覚を高揚させる必要がある……という設定だ。 『すまない。こんな事までするつもりはなかった』 『謝らないで。オーリオ。ボクは、あなたで良かったと思ってる』 何度かからみがあるが、これが最初の『開通』だ。 最初ちょっと苦しそうなシーンはあるが、すぐに気持ち良くなってアハンアハン言い始める。 『……使命などわすれ…はぁっ…キミに……おぼれそうだっ…!サリュ…受け取れっ『神樹』の力をっっ!」 『…‥あ……ボク…こんな‥…あっああ!オーリオ!溢れる…力がっ!あっ出ちゃう!んふぅっっ……で‥…る」 『…』が多すぎる。 はぁ……。

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