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20-むちゅむちゅ[蹴飛ばされても文句は言えねぇ?]1

朝イチでフー太に仲直りの報告をした。 オレと桐田のことで心配をかけたからな。 ちゃんと説明して、わかってもらえた。そう言うと、フー太も喜んでくれた。 ホントいい奴だフー太。 問題行動の多いカズに関しては、ベタベタ禁止令を出した。 友だち甲斐がないなんて言われたけど、知ったこっちゃない。 『お早く彼女が出来るように、あえてのベタベタ禁止だ!』とよくわからない理屈を言ってみたら、なんとなく納得していた。 かわりにトモジにベタベタしてるんで、まだ次の彼女を作ろうという気は無いんだろう。 これでもう桐田にキレられる心配はないはずだ。 普段学校では物静かで、電話ではいつもめちゃくちゃ優しかったから、怒った桐田はホントすげぇ怖かった。 けど今朝、登校してすぐに背後からかけられた桐田の「おはよう、サヤちゃん」は過去最高の甘さで………。 アレはヤバかった。危うく学校なのも忘れて、萌え狂って叫び出すとこだった。 胸はドキドキするし、顔はニヤけそうになるし。 オレがここまで浮かれてるなんて滅多にないことだから、フー太に桐田との仲直り以外にもなんかいい事あったのかって聞かれてしまうし。 ――決まってんだろ、真矢がイケボで甘ーーーく「おはよう」って、言ってくれたんだよっっ!!! んなこたぁ、絶対言えない、けど、言いたくて仕方がない。 浮かれ気分のまま授業を受け、休み時間に、昨日の電話で桐田が『あまり自分の事を見ない』なんて不満げに言ってたのを思い出し、チラ……っと視線を送ってみた。 けど……。 昨日あんな媚び媚びな声でラブラブちゅっちゅな通話をしてしまったせいで、マトモに目を合わす事が出来なかった。 恥ずかしい。 やっぱり夜はおかしなノリになりやすいからな……。 ちょっとどころでなく顔が火照(ほて)ってきてしまったので、手洗い場に行って顔を洗った。 鏡を見ながら昨日の自分のセリフを思い返す。 『桐田だけだから。桐田にしかあんな声で甘えたことないんだから♡』 うっ……。 こんなキツい顔であんな可愛い子ぶった声出してるヤツがいたら、オレだったら後ろから殴るな。 ホントに桐田はオレの顔を見ながらあんな事言われても、引かないんだろうか。 『やっぱ無理!』とかいって蹴飛ばされても文句は言えない気がする。 自分の想像の恥ずかしさと悲しさで何ともいえない表情になってしまった。 「なに変な顔してんだ?」 横から急に声をかけられた。 桐田だ。 優しい口調だったけど、ちょうど考えていた事が悪かった。 『変な顔』という単語に反応して、泣きそうな表情をさらしてしまった。 「えっ!? どう……どうした?何かあったのか?」 桐田が焦っている。 軽口だってわかってるのに、過剰に反応した自分が情けない。 「なんでもない」 そうは言ったものの、声音(こわね)がしょんぼりしすぎで、心配を払拭する効果はゼロだろう。 「何があった?誰かに何か言われた?」 ――オマエに変な顔っていわれた……。 そんな事を思うオレは、まるで小学生みたいだ。 情けない顔のまま桐田を見つめる。 桐田がきょろっと周囲を見渡して、オレの腕を引いて歩き始めた。 行き先は屋上手前の階段踊り場だ。 人の寄り付かない場所で一番近いのがここだったからだろう。 屋上へのドアを背にしてオレを座らせる。 「どうした?さっき、まるで泣き出しそうだった」 あらためて言われて恥ずかしくなった。 あんなどうでもいい事で、こんなに心配をかけちまうって……ガキか。 「ホント、なんでもないから」 「また、そうやって誤摩化すなよ」 「いや、ほんとに、ホントにしょうもないことだから」 「じゃ、余計に言ってくれよ。『ホントにしょうもないこと』なんだったら、気軽に話せるだろ?」 意外にゴツい手でオレの顔を両手でそっと挟むと、優しく言った。 ……ズルい。 すげぇカッコいい声。 「んんん…ホント、なんでもなぃ。心配かけてゴメンな。真矢」 つられて甘えるような声を出してしまう。 「ダメだよ。サヤちゃん。そんな可愛い声出しても誤摩化されない。可愛いけど……。はぁ……もう一回言って?」 「えっっ??なんでもっかい?えっと……心配かけてゴメンな。真矢」 真顔で言われた『可愛い』の言葉と予想外のリクエストに動揺する。 多分、顔も赤くなってるに違いない。 「いや、その…面と向かって俺の名前呼んでくれたの初めてだから。しかも超可愛いし」 「か……わいい?」 「うん。可愛いすぎて食べちゃいたいくらいだ」 「……気持ち悪くない?」 可愛いと言われ嬉しかったけど、やっぱりこのキツい顔を見て可愛いと感じるのは無理があるよな。 「は……?気持ち悪いって、なんで?え?なにが?」 さっぱり意味が分からないという顔でオレを見る。 そして何か顔についているのかと、不思議そうにきょときょとと観察し始めた。 「その、オレ、こんな顔で、甘えたこと言っても気持ち悪いだけ……だろ?」 桐田は一瞬驚いた顔をして、その後むっとした表情になる。 「やっぱり誰かに何か言われた?」 「いや、そうじゃなくって…鏡見てたらなんか……」 「はぁ…………」 盛大なため息をついた後、ぐいっと顔を寄せた。 「サヤちゃんに鏡でどう見えたとしても、俺には超可愛く見える!たしかにサヤちゃんは男らしくてキツい顔立ちをしてるよ?けど、そんな男らしいサヤちゃんが、あんな可愛くて甘えたみたいな声で俺に話しかけてくれるんだよ?萌えないわけないだろ?萌え萌え!激萌え!不可説不可説転(ふかせつふかせつてん)萌え!萌えすぎて、もう焼け野原だよ」 いつも穏やかに話す桐田のマシンガントークに面食らう。 よくわかんねーけど、焼け野原……って駄目じゃないのか?

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