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28-ぷんぷん![八つ当たりとか…ダメだ]
初めて真矢がウチに来てから一ヶ月ほど経った。
先週末もたっぷりイチャイチャを堪能して、幸せメーターはグングン上昇中だ。
とことんきっちりしている真矢がオレの母ちゃんに挨拶したがったので、いちゃつく前にちょっとだけ会わせたりもした。
けど、母ちゃんのあのうさん臭い物でも見るような目……。
真矢に対してじゃない、オレにだ。
オレをキッチンに引っぱりこんで、
「あんな真面目そうな子に、変な遊びとか教えちゃダメよ???」
なんて、やたらと真矢を心配していた。
母ちゃんは、オレに対して『愛情はしっかりあるが、信用はしていない』と言い切る人だ。
人間なんていくらでも間違いを犯すんだから『うちの子を信用してますから』なんて言うのは無責任な親の放言だと思ってる。
それに、全く信じてないわけじゃなくって『なんかヤラかしても、ちゃんと反省して立ち直れる』と信じてくれてるってことらしいし。
オレとしても、闇雲に信じてると言われるより『アンタが間違っても、ちゃんと正せるようにサポートするから大丈夫』と言ってくれる母ちゃんの方が楽だし、ありがたい。
そんな母ちゃんを裏切りたくないから『立ち直れないような失敗だけはしない』って思ってる。
でも母ちゃんゴメン……。
変な遊び……オレが教え込まれてるかも……。
とりあえず母ちゃんには真矢を友だちとして紹介した。
そして……いつか、ちゃんと恋人として紹介出来ればいいなと思ってる。
真矢は家がかなり遠いらしく、平日に遅くまでオレと一緒にいるのは難しいみたいだ。
電車通学だって聞いて『え?そこそこ本数あるから大丈夫じゃないのか?』と、思ったけど、マイナー路線な上に、特急なんか止まらない駅で、本数が多い通勤通学向け電車は真矢の利用する二つ手前の駅まで。
真矢の最寄りの駅の終着はなんと夜九時。
通学時間は電車だけで一時間以上。
なので七時半過ぎくらいには乗車駅に行かなきゃいけないらしい。
それすら最終で帰る場合だ。
地方とはいえ、オレの住んでるあたりは田舎ってカンジじゃない。
自宅からだと15分も歩けば繁華街に出る。
たとえ夜中まで遊んだって、困らず帰れる距離だ。
なので真矢の通学事情には、ただただ驚きだ。
そして『電車ですらないから』とも言われた。
『鉄』じゃないのでピンとこないけど、ディーゼルらしい?
そんなカンジで平日は遅くなれねぇから、学校内で一日一回は二人っきりで会えるよう工夫している。
だいたいは屋上扉の手前の踊り場だけど、あそこだって絶対無人ってわけじゃない。
けど、そこは真矢がいろいろ場所を考えてくれる。
ホントありがたい。
けど前に、放課後二人で会うはずだったのに、真矢の都合で会えなくなってしまった事があった。
そしたらオレは、自分でもビックリするほど子供みたいにスネてしまって……。
正直、スネて真矢にグズグズ言ってる時に、すでに恥ずかしく思ってた。なのに止められない。
オレ……ウザイ。
真矢に電話で何度も謝らせて、八つ当たりして。
でも、そんなの本気じゃない。
まあ、甘えてんだ。
それをわかってるから真矢もオレを散々甘やかす。
オレは…………。
いいのかこれで?
でも、真矢が
「そんなサヤちゃんも可愛い……」
とかいってオレを甘やかすかぎり……変われねぇだろな……きっと。
そして今日も。
学校では二人で会ってイチャイチャ&チュッチュしたけど、帰ってから『急な用事で夜の電話が出来なくなった』という内容のメッセージが来た。
物わかり良く、
『そっか、じゃ、しょうがないな』
なんて返信したけど、内心めっちゃスネてる。
通話できないんだからフー太達と遊びに行ってもいいのに、なんかそんな気になれない。
鳴らないとわかっているスマホを手に持ち、ベッドでゴロゴロ。
フー太達にも、今日は絶対連絡を寄こすなとわざわざメッセージをした。
着信音でぬか喜びしたくないからな。
けど、結局暇を持て余し、なんとなくスマホに入れっぱなしになってた『自分の音声』を聴いてみた。
おー。喘いでる喘いでる。
妙にのほほんと聴いてしまった。
なのに、喘ぎながら『桐田っ』と真矢の名字を呼んでるのを聴いて……。
苛立ちまじりにその音声を消去してしまった。
自覚はある。
スネてる。
ふて腐れてる。
気持ち良さそうに喘ぎながら真矢の名字を呼ぶ自分の声が幸せそうでムカついた。
バカだ。オレ。
あの頃より今の方がさらに幸せなのに。
こんな小さい事でいちいちふて腐れてたら、上手くいくものもいかなくなってしまう。
ベッドから立ち上がると、デスクに向かってPCを立ち上げた。
ヘッドホンをつけて、真矢の声を聴く。
乙女ゲームのクリア特典……。
…………。
うっっ。カッコいい。
真矢のアメーディオさまっっ。
さっきまでスネてたのに、一瞬で萌えてしまった。
『おやすみ、俺のエンジェル。今日も夢の中に君をさらいに行くから。いい子でまってろよ?……ちゅっ』
ふ……。
そうだなっっっ真矢!
アメーディオさまのコスプレで夢の中に会いにきてくれっっ!
アホな想像をしながら天を仰ぐ。
もう、止まらなくなって、次々と音声を再生していった。
オレは真矢の声も好きだけど、表現力が……ホントいいんだ。
ただ「……おはよう」ってセリフをエロく言うくらいなら、ネット声優やってるなら誰だってできると思う。
けど、真矢は、エロさにプラスして、
『あっっもう!この前にどんだけ甘い夜すごしたんだよっっっ!』
と、想像力を刺激されて、悶えたくなるような言い方をするんだよな。
発声とか演技とか細かいこと言ったらきりがないけど、表現力はスバ抜けてると思う。
そして単純なセリフほどそれが際立つ。
乙女ゲームやBLゲームの真矢の甘い口説き文句にメロメロになって、R18でハァハァいって、オレのために真矢が録ってくれたガチの喘ぎ声でもう……。
いつの間にベッドに寝転んでいたのかわからない。
お気に入りの真矢の音声三本を再生ソフトでリピート設定にしてぼーっと聴いていた。
いや、ぼーっとっていうか、メロメロでハァハァで下着の中はデロンデロンだ。
足をすり合わせながら自分の腹や胸をねっとりとなで回していた。
そしてヘッドホンがズレたせいで自分の状態にハッと気付く。
何やってんだオレ……。
でも、昼間に真矢と話したカンジだと、もし今日電話できてたらエロい方向になりそうな雰囲気だったんだよな。
それに『恋人』を想って寂しさを乗り切るってのは、スネて八つ当たりするよりよっぽどマシな気がする……。
はぁ……と、息をひとつついて、ヘッドホンをきっちり装着し直す。
途中で外れてしまいそうだけど、ま、いっか。
開き直ってファスナーを開くと、下着ごとボトムスをずり下げた。
耳元では真矢がオレに向かってささやいてる。
いや、この音源はキャラなりきりのオーリオバージョンだからオレにじゃないけど。
でも……あのときだってすでに真矢はオレのことを想像しながら録ってくれてたんじゃないかって思ってる。
この音源ではフェラしてる想定のシーンがある。
オレはまだフェラはした事ないし、今までこの音源を聞いてたときも、自分がされてるような気分だった。
けど、今日は……。
当たり前みたいに口が開いて、舌で自分の口内をまさぐっていた。
でも、それじゃ物足りなくって指をくわえ込む。
「はぁ……真矢……んはむ……まやっっ」
『上手だサヤちゃん……気持ちいいよ…………ん……ありがとう』
頭のなかでセリフ内の名前がサリュから『サヤちゃん』に勝手に変換される。
……オレ真矢にお願いされたら、一応嫌がるフリしながらも超喜んでくわえてしまいそうだ。
はぁ……ていうか……。
お願い……してくれねぇかなぁ……?
音声の内容にあわせて自分の乳首をつまみ、ねじりあげると、勝手に腰がうねり始めた。
「ん……あっあはぁ……まやっ……真矢……」
真矢の『声』に、求められて、誉められて、奉仕されて……。
心も身体も気持ち良くなってしまう。
でも、もっと。
もっとリアルな真矢が欲しいっ……。
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