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第29話※
「優弥? 優ちゃ~ん?」
イッた途端に、力が抜けた優弥の名前を千歳は何度か呼んでみる。
だが、閉じられた優弥の瞳が開くことはない。
「ん~、感じすぎちゃったかな」
温めの温度に設定して、千歳は自分と優弥の身体の表面からオイルを洗い流した。
和彦からもらったオイルは、本人が太鼓判をおすくらいの効果が……実際にあった。
千歳自身はオイルを使ったわけではないが、優弥の身体に塗られたオイルの触れた箇所が、さっきまで人肌を求めて疼いていた。
優弥に触れることが気持ち良くて、離してあげられなかったのだ。
こんな感覚を、優弥がしばらく後ろで感じなければいけないのかと思うと、ちょっと可哀想な気もしたがせっかくオイルで解れた後ろを洗い流してしまうのも、もったいない気がする。
「ごめんな。その分、気持ち良くさせてやるから」
千歳は優弥の額にキスをしてそう謝ると、自分の身体をタオルで軽く拭く。
そして、もう一枚のバスタオルで優弥の身体を包み、部屋へと抱き抱えて行った。
部屋に戻り、抱き抱えていた優弥を千歳はそっとベッドへと下ろす。
そして、ペットボトルの水を一口、口に含むと、ゆっくり優弥の唇に注いでいく。
「ん……」
何回かそれを繰り返していると、優弥の瞳がゆっくりと開かれた。
「気がついた?」
千歳がそう聞くと、優弥は何度かまばたきをしながら身体を起こした。
「あ、俺……?」
「お風呂場で二回目にイッた後、気失ったんだよ」
状況が飲み込めずポカンとしている優弥に千歳がそう説明すると、急にさっきまでの記憶を思い出したのか、優弥は途端に真っ赤な顔をして布団で身体を隠してしまった。
「なんで隠すの?」
「なんでも!」
布団を引きはがそうとする千歳と、それを拒む優弥とでしばらく布団の引き合いが行われる。
(なんで優弥はこんなに可愛いんだろう? 普段も充分に可愛いけど、やっぱりヤッてる時が一番、可愛い)
優弥は全身で千歳を好きだと訴えてくるくせに、いざとなると初めて抱かれるかのような反応をする。
そんな優弥とのやり取りを千歳が楽しんでいると、突然優弥の身体がビクッと跳ねた。
そして、シーツをギュッと掴み何かに耐えているような表情をしている。
「どうした?」
千歳が優弥の肩に触れ、そう聞いた時だった。
「あっ……」
優弥の口から甘い声が小さく漏れた。
「もしかして……後ろ、ツライ?」
考えられるとしたら、さっき後ろに塗ったオイルが媚薬効果を発揮しだしたということだろう。
予想通り、千歳の問いに優弥は恥ずかしそうに俯いてしまう。
充分にオイルを使って解したから、きっとすぐにでも入れてほしくて疼くのだろう。
「入れてあげる代わりに……」
千歳は優弥の耳元へと唇を寄せると囁く。
「俺の……舐めて」
そう言って優弥の耳に千歳が軽く噛み付くと、優弥は小さく喘いで身体を震わせた。
これまで何度も肌を重ねたけれど、一度も優弥が千歳のを舐めてくれたことはなかった。
今までは自分が優弥に奉仕すると千歳は考えていたし、それを優弥に強要もしたくなかったからだ。
でも、優弥も自分のことを好きでいてくれるのなら多少の我が儘も聞いてくれるかもしれない。
もっとも、媚薬効果でツライ状態の優弥に言っている時点で強要しているも同然だが。
優弥が戸惑うように、千歳を見上げてくる。
千歳は優弥を安心させるために、肩を抱いて額に優しくキスをする。
「あのオイルならバニラ味だから、大丈夫だよ」
千歳がそう言うと、優弥は少し躊躇った後に小さく頷いた。
それを確認した千歳は優弥の抵抗を少しでも無くすためにオイルを手に取り、自分自身へと垂らしていく。
途端にオイルの冷たい感覚と、バニラの甘い香りが千歳の部屋へと広がる。
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