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花の散り方。三
「どしたの? 楓の大声で飛んできちゃったよ」
本当に飛んできたのか、下着姿で髪も濡れた紫呉が部屋を覗きに来た。
そこで、畳の上に広がる散らばった書類と、泣きながら呆然としている私を見て、表情を変えた。
「晤郎、てめえ、楓になにしたんだ!」
「うるさいですね。俺はただ、男に抱かれたぐらいで幸せだと浮かれて、惨めだと言っただけです」
「は?」
「俺は、この書類が全部手続き終われば、自由にしていただきます。それだけです」
「まてよ、晤郎、おまえ、……よく分かんねえけど一発殴らせろ」
廊下に出ようとした晤郎を、紫呉が捕まえる。
状況は分かっていないようだけど、とりあえず殴ろうろ本能的に行動しているのが彼らしかった。
「いや、紫呉さん。いいんです。喧嘩しないでください」
「楓」
「晤郎さん、私は世間知らずなので、申し訳ないですが書類の説明をしていただけますか」
涙を拭いて、テーブルの上の書類を手に持つ。
自分でもわかるぐらい手が震えているのが分かった。
「お願いします。紫呉さんは……出て行ってもらった方がいいですか?」
晤郎は嘆息した後、紫呉の姿を見た。
「構いませんが、服ぐらい来てから出直してください」
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