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花の散り方。五
「もうこれは、俺と結婚して名字変わるしかないな」
「は?」
「俺の父方の名字に一緒になれば、雲仙寺の柵からでれる。婚族関係終了手続きしたら、楓は俺の扶養義務がなくなるから、楓が死んでも俺に一ミリも財産が来ない。ってなわけだよね」
「なるほど! 一番いい例がここにいましたね。なるほど。紫呉さんになら渡してもいいのですがね」
「もー、か、え、で」
イチャイチャしていたら、晤郎がわざとらしい咳をしてきたので、真面目な顔のふりをする。
なるほど、なるほど。
でも私はこれで親族誰一人頼れない、実質天涯孤独の身になるわけか。
だから晤郎はあんなに辛辣な言葉を選んで、私の身を引き締めようとしてくれたんだ。
本当に、彼は不器用な人だ。
「……そんな冷たい言葉でお尻を叩かなくても、私だって自分の立場だってわかります。晤郎さん」
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