132 / 169
花の散り方。七
紫呉は鼻を掻きながら、唸っている。
何というんだ。
「俺も晤郎も、ここで満足してねえんだよ。満足どころか、これぐらいで幸せになってくれる楓が歯がゆいのは分かるよ。これぐらいで幸せになるのに、それすらも許されなかった過去が、変わるわけでもないのに歯がゆいし。誰を殴っていいのか分かんねえ」
「……紫呉さん」
「だから、俺と晤郎は、楓の当たり前の未来の道を作りたいだけで、それは楓には迷惑かけない。俺たちが好きにしてるだけだから、気にしなくていい」
「……」
「怒った?」
気にしなくていい、迷惑かけない、それぐらいの幸せ。
その言葉は、私を傷つけないとでも思っているのか。
「私が、貴方に触れられて体温を上昇させるのも、花が散るように、花ひらを開くのも、ちっぽけなことなのでしょうか」
「楓」
「私は貴方の未来を奪ってしまったのに、私に捉えているのに。私だって貴方に抱かれることに抵抗が全くなかったわけではない。でも愛情があったからなのに」
行動のすべての現況が誰かへの愛情。
それなのにちっぽけだと否定されたら、わからなくなる。
二人がしていることも、私への愛情なのならば、なぜ私に関係ないとか平気で言えるのだ。
「ごめん。――ごめん。楓」
「守られるだけなんてごめんです。対等じゃないのなら、私は悲しいです」
ともだちにシェアしよう!