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そうだ。家出しよう。六
「は?」
「寝静まった後か、メールや電話で済ませばいいのに。こんな時間では逆に」
「待って。俺、別に晤郎に用はないけど」
それどころか仕事が忙しいから、できれば邪魔しないでほしい。
「もしかして絢斗から言われたの?」
「そうだが」
絢斗なら、さきほど俺に問題を考えとけと、この部屋から出さないようにしていった。
そういえば押し入れから何か持って行っていたようだし。
それと同時に、駐車場の方から車のエンジンの音がする。
「あいつ」
「どうした?」
急いで駐車場へ向かうと、丁寧にバイクのタンクが開け放たれ、ガソリンが全て捨てられていた。
あいつは晤郎の車で、出て行ったらしい。
自分のバイクはちゃっかり鍵を持って行ったままだろう。
ということは、楓も一緒だ。さっき押し入れから楓の私服を持って行ったんだ。
「どこに行くか、宛はわかりますか?」
晤郎が、頭を抱えながらため息を吐く。
「楓の部屋に行って何かヒント探してみる」
仕事が忙しい時に何をしてるんだよ。
あいつ、帰ったら絶対に毟る。ぜったいに再起不能になるまで殴り続けてやる。
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