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そうだ。家出しよう。八
「なるほど……。ありえますね。黒幕ですからね、あの人」
「でも母親と会った時、楓の反応は良くなかったんだよなあ。母親じゃなくて、その関係者で、家に関係ない人。親族が遠縁」
「調べましょう。バイクでこっちを下れば先回りできますよ」
山の地図を開いて、晤郎が俺に道を教えてくれた。
が、つまりバイクでがけのような坂を俺が降りろということだな。
「俺が調べているうちに追いつけ。で、後を付ければいい。楓様が行きたいのなら行かせてあげてもいい。だが、あの人、何年外に出ていないんだろうか」
晤郎さえ首を傾げるのだから、ここに嫁いでから出ていないのだとしたら10年以上。
子どもの頃の様子は知らないから、そのころも出ていないとしたらそれ以上。
「……いい機会だったのかも」
いい理由になったのなら良かった。
一緒に出たかったんだけど、俺が仕事で構わなかったのがいけなかったんだ。
ここに来てから楓中心、楓優先にしてきたツケが意外と多かったから焦ってしまった。
俺が悪かったんだ。
「よし。追いつこう。後は頼んだ」
「はいはい」
晤郎も、心配そうといえば心配そうなんだがどこか楽しそうだった。
だが、どうせあとですげえ怒るんだろうな。
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