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そうだ。家出しよう。九
Side:楓
慣れないセーターが、季節に合わず少し暑い。
仕方がないとしても、タートルネックのセーターというのだろうか?
これは私に似合っているのかもわからない。
ジーンズは少しサイズが大きい気がしたら、ベルトを貸してもらえた。
実はベルトは、初体験だ。
使ったことがない。
疑われないようにスカートか着物がほとんどだったから。
「実は、ここに嫁いでから、この山を下りるの二回目なんです」
「へえ。ああ、旦那さんの葬式だっけ、おおっと」
慣らしているはずなのに、道が荒く体が大きく動いた。
この山道をバイクで駆け上がってきた絢斗くんも紫呉さんも尊敬する。
引越しのトラックもだ。
「そうなんです。父が亡くなったときも、この姿ですから行くのを止めました。というか、悲しいって感情がないのに行くのは失礼かなって」
「葬式で笑ってやればよかったのに。ほら、織田信長みたいにあの灰みたいなやつ投げつけて」
「……驚きました。意外と貴方って教養ある言葉を吐けるのですね」
例えに歴史上の人物を出すなんて、なかなかだ。
「姐さんって、俺のこと馬鹿だとおもってんだろ」
「そうですね。頭に血が上ってガーってなるタイプかなって思っていました」
「間違ってはないんやけどさあ」
納得いかないように言いながらも、彼は真面目な顔になった。
真面目な顔になると、クオーターのせいか迫力があった。
「これからはそんな服着て過ごしたら?」
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