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そうだ。家出しよう。十三

「だから、こんなふうに紫呉さんが忙しい時、私は本を読むかミステリードラマを見るか、お昼寝をするか、まあつまり私の日常は彼が忙しかろうが暇だろうが変わらないわけですよ」 「ふむふむ」 「これって、彼が不公平じゃないですか? 私は、恋人になるには、ちょっとおかしくて無理がある存在ではないでしょうか」 晤郎があの屋敷を出て行くとして、私から離れてしまうとして。 私に残るのは、莫大な遺産と無個性で何も生み出せない人形のような自分。 いざ自由になってみても、いつか紫呉さんは私みたいな存在は邪魔じゃないだろうか。 「君に教えていただいた、最高に紫呉さんにダメージを与える『やり捨て』という言葉ですが、本当にこのまま私は、彼のもとを去った方が正解なのかもしれない」 「それ本音?」 「……身分の差というか、彼ならきっとあの腐りきった雲仙寺を再考しちゃうかもしれないし」 「本音なん?」 「……本音、ですよ」 改めて口にすると、とても悲しくなったが頷く。 すると絢斗くんは、私に一歩近づいて急に声のトーンを押さえ、ぼそぼそと話し出す。 「実はな」 「はい?」 「紫呉、もうコンビニに居んねん。俺らの会話、聞いとる」 「は!?」

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