153 / 169
そうだ。家出しよう。十四
田舎のコンビニなので、駐車場が広い。トラック二台と、大きなバイクが置いてある。
けれどコンビニの中は、私しかいなかったはず。
どこに彼が?
「嘘ですよ。私のバイクの鍵の隠し場所は、簡単には見つけられないはず」
「だが、おるよ。あのバイク、俺のやし。めっちゃ視線感じる」
「ど、どうしましょう。連れ返される?」
こんなに早く冒険が終わるとは思わなかった。俯く私に、絢斗くんは全然平気そうな明るい声で笑う。
「んなわけないやん。のけ者にされて悔しがってるだろうけど、あんたがあのかび臭い屋敷から出て、万々歳や。だから後ろから監視しとるんやないかな」
「本当ですか?」
「そうじゃなかったら、俺は殺されとるはずや」
「……紫呉さん」
もう一度コンビニの中に入る。
暇そうな従業員一人だけで、やはり人はいない。
雑誌を読むふりをしてしゃがんで辺りを見渡すと、絢斗くんの向こうの壁の方で何かが動いた気がした。
外だ。外にいる。
反対側の壁を伝い、後ろへ回り込んだ。
すると絢斗君を監視している、ヘルメット姿の男がいた。
気づかれないように近づき、そっとお尻を触ってみた。
「ひゃ」
「固い」
「楓!」
ともだちにシェアしよう!