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そうだ。家出しよう。十五
「どうやってあの難解な暗号を解いたんですか」
「どうって、えっと、苦労したけど頑張ったんだよ」
「で、あの山をどうやってバイクで追いついたんですか」
上から下まで観察すると、あちこちに葉っぱがついていた。
もしかして、晤郎しか知らない獣道をバイクで駆け降りたのだろうか。
「それより、楓」
「はい」
まずは謝罪かな、と思ったら徐に携帯を取り出して連写しだした。
「私服、やばい。これ、やばい。フレンチコートとか、あとファーがついたジャンバーとか、ダッフルコートとか、あとスーツとかも来て欲しい。やばい。最高」
「しーぐーれーさーん。まずは放置したお詫びじゃないんですか!」
「お前ら、電話中だから痴話げんかなら離れてやれ」
しっしっと手で追い払われ、仕方なくバイクの止まっている方へ移動する。
「……ちょっとだけ仕事が押してたんだけど、軌道がのったらちゃんと楓とイチャイチャする時間を確保する予定だったんだよ」
「そうですか。まあ私はいつも暇ですからね」
肉まんの続きを思い出し、食べようと取り出したら奪われた。
「あっ」
「今からくるくる寿司行くから、食べるの控えて」
「私は、今からハンバーガーです!」
「でも寿司屋の前通った方が、弥生さんの妹さんの家が近いよ」
にやりと紫呉が笑ったので、急に私は座り込んでしまった。
「かえで?」
力が抜ける。目の前がぼやけて、涙がにじんでいるのだと気づいた。
紫呉から逃げたつもりでも、こんな短時間で追いつけられるし、行く場所が気づかれてしまう。私の行動は浅はかで、誰にも分ってしまうんだ。
「ごめ、かえで、泣かないで」
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