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そうだ。家出しよう。九
「……分かりました。ちょっとだけ、トイレ行ってきます。トイレ行ったら、一緒に行ってください」
「ああ。ごめんな、楓。俺が異常だから。本当なら見つけ切らないんだから。俺の愛のパワーだから」
「はいはい」
大丈夫ですよ、と安心させるために笑顔で背を向けて、コンビニでメモ帳とのペンを買った。
紫呉は、絢斗君となにか話し込んでいる。
そしてその場で開けて、店員にメモを見せた。
『ストーカーに付けられています。裏から逃げらせてください』
女性の店員だったが、私の顔とノートを交互に見て頷いてくれた。
トイレの隣の従業員のドアから、裏に逃げて寝ていたトラックのおじさんに同じくメモを見せた。
『近くの駅まで逃がしてください』
驚いていたけれども、信じてくれたおじさんは、私を荷台に乗せてトラックで近くの駅まで送ってくれた。
荷台の隙間から、紫呉さんがちょうどコンビニの中を覗いているのが見えて、思わず笑ってしまう。
行く場所は、ばれてしまった。
だったら、少し冒険をしてみたい。
自分を全部知っているような彼の言動に少し腹が立ったから、自分で行ってみようと思う。
初めて降りた駅前。
駅名と線路の絵を見ながら自分で切符を買い、駅弁を購入して最寄りの駅までのんびり向かう。
絢斗くんや紫呉さんと一緒に車で向かう旅はきっと楽しかっただろうが、私は自分の行動に後悔はしていなかった。
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