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そうだ。家出しよう。十二

Side:雲仙寺 紫呉 「もう我慢できない」 「早いって。早漏かよ」 「俺は行く! 俺は行くぞ!」 「待てよ。姐さん、すげえ怒るぞ」 楓がコンビニから姿を消して二時間。 きっと向かった先は、此処だろうと来てみれば、一階の部屋から楓の笑い声が聞こえてきた。 こんな季節に鍋とかありえねえだろ、とか、言いたいことはたくさんある。 けれど、今、出て行ったら楓の自尊心を傷つけることも分かっている。 でも、俺だって心配なんだ。 楓が家出するぐらい、心に隙間を作ってしまったことも。 山を下りても、自分の行動なんてすぐに分かってしまうという、自分のちっぽけさに絶望させてしまったことも悪かったとは思っているが、楓をどうしても一人にしたくなかったんだ。 『凛・ジェイネス』 英国人の旦那とともにずっと英国にいたらしい。 雲仙寺は貿易で栄えた家だが、海外には権力がいかないし、夫も女王から伯爵の地位を与えられた貴族の末裔。 もし雲仙寺に、弥生さんの妹だとばれたとしても困らない。 だから俺も本当のところは心配していない。 けど、中で何を話しているのかとか、なんで笑ってるのかと、本当はどれぐらい怒ってるのかとかが心配なんだよ。 「乗り込んでくる。俺、英語けっこう喋れるし」 「やけ、今行ったら、益々嫌われるって」 「だって。だってさあ」 小声で言い争っていたら、一階のドアが開いた。 「さっきから煩いですよ」

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