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そうだ。家出しよう。十五
高速道路の方へ向かい、楓が貰っていた割引券のあるホテルへ向かう。
楓は、ここがラブホテルだと知って宿泊半額割引券を貰ってるってことでいいんだよな?
ホテルの名前は『パイレーツオブラブリシティ』
パーキングエリアの入り口に、でっかい海賊船が飾られている。
車のナンバーを隠す看板が、宝石のはいった宝箱。
入口には『オープンセサミと唱えろ』と英語で書かれているし、部屋は全部船の中みたいに木造の壁紙。
ダミーの窓には海の絵が描かれている。
「この、オーシャンズ・マリーって部屋、いいですね」
「お、おう」
何がいいのか分からないけど、頷く。
怒らせないようにここは楓の好きなように従おう。
でもどうせならどっかの高級なホテルの最上階、スイートルームとかで、アダルティでゴージャスな夜を過ごしたかった。
よりによって半額でラブホテルなんて、悲しすぎる。
「わあ、紫呉さん、見てください。船長の帽子が飾られています。骸骨の標本、宝箱の中は……アダルトグッズの販売機でした。すごい、あ、押したらローターが出てきた。こっちは冷蔵庫かな。一本300円なんだ。安いですね」
「ひいい、楓、落ち着いて。ちょっとこっち来て」
ポンポンとベットを叩くと、楓の頬が赤く染まった。
「……早急すぎます。もっとムードとか」
「いや、ちが、話し合おうって。あ、じゃあ、こっちのハンモックに座って」
「いいですよ」
柱と柱の間にかけられたハンモックに座ると、思ったよりも深く沈んで、足と足の間から少し顔が見えるぐらい沈んでしまっている。
笑ったら怒りそうなので、プルプルと震えて耐えた。
「紫呉さん」
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