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「確かにペットですね、晤郎」 「……本当にすいません。どうしても彼の境遇に耐えきらず……打破できる案が、貴方しかなく」 「ふうん」 両家の目の上にたんこぶで、旦那様から様々な権利や莫大な遺産を引き継ぎ、暇を持て余しているから、かな。 「……世話は君がするんですよね? 晤郎さんに世話されてきた私は、子どもの世話なんてできない――」 「なあ、カエデって女なの?」  大人の会話に口を出すことも、おいおい注意していかなければ。 「綺麗な顔してるけど、声が低いしやわらかくない。おっぱいは?」 「――っ」 着物の上からとはいえ、いきなり両手で胸を揉まれて固まってしまった。 「ないな。全くない。ないのか!」 「連呼しないで結構です。あるはずないので私のことは晤郎に聞いてください」 「……ゴロウ、こんな屋敷に二人で住んでるって、夫婦?」 「いいえ。自分は楓さまの世話係とこの屋敷の管理人です。一緒には住んでいません」 「……ああ、ドーセイカップルか」 「……」  教養はないのに耳は肥えている。知らないくせに言葉を使いたがる子どもは多い。だからこそ勉強させなければいけない。 「学校の手続き、扶養の方ですが、養子に迎える場合は遺産相続でもめると思いますのでご両家の反対にあうので、預かるのみですね。ですが――」 「晤郎さん」  きょとんとした紫呉が、私と晤郎の顔を交互に見る。耳が肥えている上に、大人の表情で話を理解しようとしている。これは子どもの前で話す内容ではなかった。 「すいません」  紫呉の視線まで屈み、笑顔で頭を撫でる。犬みたいな、ごわごわした毛並み。けれどどこか憎めない。 「いいよ。紫呉さん。なにも気にしないで私の子どもになってしまいなよ」 「……いいの?」 「いいよ。楓さんはね、雲仙寺で一番偉い立場のお嫁さんだから」 「ふうん?」 首を傾げる彼は可愛い。私は何もかも決められて生きてきたから、彼のように自由に生きてきたのが羨ましかったのかもしれない。 それに旦那様と同じ顔。同じ顔で私に触れてくれる。それで嬉しい。

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