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十三

「俺も今聞きました」 「困った。どの部屋も私物を置いている。一番日当たりの悪い部屋では可哀想だし、昔彼が使っていた部屋は?」 「楓様のぬいぐるみでいっぱいです」 「じゃあ、旦那様の部屋でいいや。あそこ使ってないけどこの屋敷で二番目に日当たりのいい部屋でしょ」 「……なるほど。いいのですか?」 「私がそこに移動して、日当たりのいい部屋を譲ってはあげたくないので」  二人の逢瀬のあと、寝室を別にしてほしいと私から言った。 すると旦那様が、部屋をいどうしてくれて私はこの屋敷で一番日当たりのいい部屋を貰ったんだ。 広すぎて、部屋の前の縁側の方で外を見ていた方が安心したけど。 「大変。彼が中学まで長期休暇で帰ってきたときは、どの布団でしたっけ?」 「そこらへんは俺が準備しますので、楓様は蜜柑でも食べてどっしり構えていてください」 ……つまり何もするなと言っている。げんなりした様子で、ちょっと酷い。  まあうちの山で採れる蜜柑は美味しいのだ。土地を荒れさせるよりは、とほぼ無料で貸し出してるせいか野菜はいっぱいタダでもらえるけど、みかんは別格だ。  三つ目の蜜柑を食べながら、それでもどこか落ち着かない気持ちを飲み込んだ。

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