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十五

俺が高校に入学するぐらいに、雲仙寺の弁護士と楓の弟と名乗る人と、晤郎が俺を訪ねてきた。 その時に、俺の母さんが雲仙寺の財産を放棄していたことと、俺が雲仙寺の会社を継ぐことはできない上で、大学までは援助するということ。 弁護士も楓の弟も俺に冷たかったけど、晤郎だけは違った。 『最終決定は楓さまです。楓様の一存で、この二人の意見は覆ります。貴方が望めば、楓様は絶対に貴方を自由にしてくれますので』  弁護士も楓の弟も、楓が本当は『女として育てられた男』だと知らない様子だった。  生まれた時に戸籍さえも偽って、16歳。つまり二人が俺を訪ねてきた歳と同じ。 まだ16歳だった楓をあの屋敷に閉じ込めたんだ。  誰も楓が男だとはしらない。 『晤郎さん、俺、楓の傍に居たい。あの人が好きなんだ』  二人が帰ったあとに、俺の本音を告げたら晤郎さんは俺を抱きしめて泣き出した。 その意味はきっと深くて、俺には理解できないほど到底深い感情が入り乱れていたと思う。 けど俺は満足だ。誰も楓を知らなくても良い。俺の神様は俺が幸せにする。 高校時代は、親戚たちの目もあったし、……好きって自覚してどうしていいか分からず帰らなかったけど、今日からは違う。 バイクに乗ると、久しぶりに帰るあの館へ目指す。 ここからバイクで数時間。まあ明日の朝には帰りつけるだろう。 *

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