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再会 四
紫呉が私の隣に座ったので、長居するつもりなのだろうと私も本を閉じる。
沢山話を聞いてあげたくて、喉を潤そうとおもっていただけなのに。
「はい」
グラスは渡されるわけではなく、口元に持ってこられた。
「自分で飲みます」
「いいから、飲ませたい」
昔から好奇心が旺盛な子だとは思っていたけど、意図が分からない。
まあこの子の知識の糧になるのかな?
唇を薄く開いてコップの端を噛むように咥えると、目を閉じた。
紫呉の大きな目が私を見ているのが耐えきれないのと、人におちゃをのませてもらうという行為に恥ずかしさを感じたから。
喉から冷えていくのに、紫呉に見られている身体が火照りだした。
「――んんっ」
もういいです、と両手で体を押すと、唇の端からお茶を零してしまった。
「もう。汚いじゃないですか」
「楓が汚いわけないじゃん。へへ、いただき」
「――っ!?」
グラスを持っていないほうの手で、顎を掴まれると強引に顔が近づいてきた。
犬のように舌で、濡れた口端を掬い上げて嬉しそうに笑った。
「――っ紫呉さん! こ、ここに座りなさいっ」
「やだよー。さて、充電終わり。荷物の片づけ片付け」
「紫呉さん!」
子どものように、大きな足音を立てながら逃げていく。
悪戯が見つかった子どものように忙しそうに逃げ回る。
せっかく姿かたちは、小説の中のヒーローのように見目麗しいのに。
もう成人した子と、親の代わりの私がキスするのはおかしい。
スキンシップが多いとしても、ここは外国ではないのだから辞めさせねば。
「楓様、すぐに準備するとのことです。蕎麦以外に追加はありますか?」
「ワサビ。紫呉さんのにだけ、山葵をご飯のように山盛りにしてください!」
「またそんな子供のような悪戯を」
「子どもはあちらです」
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