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再会 七

引っ越し業者かと思っていた人たちは、引っ越しセンターでバイトしている大学の後輩がほとんどで、運転手の二人以外は全て後輩らしい。 こんな山の奥の引っ越しとあれば、他の業者に断られたらしく、後輩たちが頑張ってくれたとかくれないとか。 そんな報告を、晤郎が嬉しそうにしてきた。 彼が、外の世界で後輩に慕われる人物に成長して、鼻が高そうだった。 そういえば、晤郎の手伝いをよくしていた。 だから洗濯や料理や掃除など一通りできると思う。 それに全寮制の学校に中学から通っているのだから、社交性と協調性もきっと人一倍あるのだろう。 それは一向にかまわないのだが、引っ越しの荷物が入り、引っ越しそばを食べた後も夕方近くまで後輩の子たちが残っていたのにはハラハラした。 血縁者以外とかかわりがないから、このまま泊っていかれたらどうしようか不安になる。 自分の身体が男だとばれることよりも、誰かに見られてしまうことが怖かった。 「かえでー。ごめんな。ずっと部屋に閉じ込めたっ」 空が紫色に落ちていく頃、ドタバタと足音を立てながら紫呉がやってきて、部屋に入ってくる。 昔はもう少し軽い音だったので、ちょっとだけまだ慣れない。 「いいえ。楽しそうな声は大歓迎です」 ぬいぐるみを片付けながら、縁側に座る。 甘い醤油の香りがする。今日は、魚の煮つけだろうか。 「なあ、俺の部屋、段ボールだらけなんだ。今日はここで一緒に寝ていい?」 「嫌です」 間も置かずに断ると、紫呉の目が大きく開かれて呆然としている。 「成人した貴方と寝る必要はありません」 「えー、でも部屋ないし! 布団もないし!」 「晤郎さんが用意してくれてるはずです。離れならお布団ぐらい敷けますよ」 「楓の隣がいい」

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